株式会社技研サービス
代表取締役副社長 棚橋泰之さん

創造性豊かな人材力で 
新しい価値を生み出し、地域に貢献する

苦境を支えていただいたお客様・従業員の皆様などわが社に関係するすべての皆様に感謝するとともに、人と人との繋がりに感謝したい

―― 現在、展開されている業務内容について教えてください。

棚橋 コアコンピタンスになるのが、54期目を迎えた清掃を中心にしたビルメンテナンス事業になります。そして、ビルメンテナンス事業から派生した警備事業と建物の管理のみならず運営も手掛ける公共施設の指定管理事業の3部門を中心に事業を展開しています。

―― ビルメンテナンス事業は、すでに54期目を迎えるというお話でしたが、会社の歴史について少し教えていただけますか?

棚橋 当社は私の祖父が創業したのですが、20年ほど前、創業者である祖父から後継者への引継ぎがうまくいかず、主要メンバーが退社するという事態に陥りました。現在は約700名の従業員がいますが、当時は200名ほどまでに減少し、売上高も半分以下に落ち込み、大変な苦境に陥ったことがあります。当時、私は、まだ20代で、生きるか死ぬかの大病を患ったこともあり、経営者が背負う責任の重さに負けそうになって、一時は家族経営への縮小も視野に入れながら経営を行っていた時期もありました。

―― 大変な苦境に陥ったわけですが、そのピンチをどのようにして乗り越えられたのですか?

棚橋 何より大きかったのが人材です。様々な人に会って、窮地を乗りきることができる仲間探しからスタートしました。素晴らしい仲間と出会う縁にも恵まれ、優れた人材も徐々に増えていきました。当時の取締役や従業員の皆様と、まさに「泥水をすすりながら」企業再生に向けて、経営を行ってきたという実感があります。この時の体験が私の経営者としての「原体験」であり、私の経営者としての哲学はこの体験に培われたといっても過言でありません。そのような中で、私が学んだことは、会社はお客様や従業員など関係するすべての方々と繋がっていて、支えられているということでした。現在でも様々なトラブルや課題を解決しなければならないとき、この原体験が役に立っていると実感しています。

―― どん底から回復して、成長軌道に乗るにあたって、どんな点がストロングポイントになったのでしょうか?

棚橋 一番のキーになった人材に関していえば、私が求めていたのは、世の中で何が必要とされているかを敏感に感じ取って、私と同じ感覚で世の中の動きをとらえて、新しい価値を創り出す創造力のある人材でした。ダイバーシティな人材が集まっているところは、当社の最大の強みだと感じています。良質なサービスを提供しようとすれば、最後は人に帰着します。目指すところは総合的な人材業であり、現在の当社のメンバーであれば、どんな仕事でも対応できるということに関しては絶対の自信があります。

―― 優れた人材が集まるプロフェショナル集団として、実際の事業にどのように活かされているか具体的に紹介してください。

棚橋 例えば、警備事業に関しては、お客様が不安を抱くことのない、しっかりとした警備計画を示して実行できる体制になっています。AKBの握手会、金融関連、あるいは100人以上の大規模なイベント警備も、その強みを生かしたものです。指定管理事業についていえば、企画書の原案が出ると、担当部長以上が集まって侃々諤々の議論を重ねます。タイプの異なるメンバーが、それぞれが持つ直感や経験に基づいて指摘したうえで完成形にします。現在は、県有施設の岐阜県長良川スポーツプラザを始め、岐阜市、各務原市、羽島市、海津市、多治見市、可児市、御嶽町で指定管理者を務めています。当社が指定管理を実施している物件は、岐阜県内では34物件、県外も含めますと全体では6府県56物件にも及びますが、様々な角度から検証した企画書を作成できることが、数多くの公共施設の指定管理を任せていただいているという実績に結びついているのだと思います。

人口減少やグローバル化、ネット社会、高齢社会への対応など、社会の構造の変化に対応し、社会が必要とするサービスを供給する企業への脱皮を図る。

―― ビルメンテナンス事業を中心にして、警備事業、指定管理事業については、今後もさらに力をいれていく予定ですか?

棚橋 はい。近年は地方自治体の公共施設の指定管理者業務について積極的に挑戦し、現在は、岐阜県を中心に愛知県、福井県、長野県、滋賀県、京都府などの県や市町村の50以上の施設を管理・運営しています。これまで公共施設の委託管理は公共的な団体に限られていましたが、指定管理者制度により、民間企業やNPOによる包括的な管理が可能になりました。民間のノウハウを活用できる制度となったことにより、税の無駄遣いが改善される方向に向かっています。制度上の仕組みにより、利益面は低いのですが地域貢献の意味もあり、今後も積極的に取り組んでいきたいと考えています。

―― 3つの事業を中心に業務展開をされていますが、新たな展開についてもお考えですか ?

棚橋 はい。3部門の事業で、当社が将来にわたって成長できるかと考えた時、このままで良いのかという疑問は常に持っています。外部要因的には、例えば、岐阜県の人口は、2040年には160万人程度になると予測されていますが、これは岐阜市の人口がなくなるということで、その影響は計り知れないものがあると思います。また、中国や東南アジア諸国などの台頭は、日本の人口減少・高齢化と相まって、労働力の国際化をもたらし、日本の外国人の労働力なしには経済が保てないような状況になってくると思われます。現在、日本においては、外国人労働力の活用は、外国人技能実習生や日系外国人の活用といった例外的な場合しか認められていませんが、当社が行っているような業務を中心として、近い将来、外国人のフル活用が行われるようになると思います。こういった時代背景を踏まえて、当社が企業として生き残り、さらに社会に貢献できる企業に成長するためには、サービスの創造と革新による生産性の向上が重要であると考えています。

私たちは、サービスの創造と革新を通じて、社会の発展に寄与すると共にステークホルダーの幸せを実現します

―― 「私たちは、サービスの創造と革新を通じて、社会の発展に寄与すると共にステークホルダーの幸せを実現します」という経営理念を掲げていますが、少し解説していただけますか?

棚橋 元来、サービス業は、労働集約型の産業であることもあって、製造業などに比べ、生産性が低く、一人あたりの付加価値生産性が低いと言われています。日本の社会経済にとって、サービス業の付加価値生産性を向上させることが、日本の経済成長性を支えるということになると考えます。当社も、「サービスの創造と革新」とはどういうことかを常に考え、新しい分野への挑戦を行おうとしています。

―― 新しい挑戦の中身について具体的にお聞かせください。

棚橋 例えば、外国人も含めた人材派遣事業の新設、小学校の子どもたちにおいしく安全な昼食を提供する給食事業の独立、設備メンテナンス・工事も行えるビルメンテナンス事業の拡充など、清掃と警備という当社のコアコンピタンスを根底におきながら、生産性の高い事業に積極的に挑戦していきたいと考えています。

―― 給食事業についても新たな展開を考えているというわけですね。

棚橋 はい。給食事業もプレゼンテーション方式が取り入れられるようになり、当社の強みをふるに生かすことができるようになりました。食育といわれるように子どもたちの健やかな成長を育む意味でも給食は大きな役割を持ちます。地域のお役に立ちたいという思いは以前から強く感じていましたから、本格参入して取り組んでいきたいと思います。

―― なるほど、事業を通じて、いかに地域に貢献できるかも企業にとって大きな意味を持つと考えているわけですね。

棚橋 はい。官の業務と民の業務の関係は、かつてのようなものではなく、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)という言葉に代表されるようにPFI、指定管理者制度、公設民営方式、包括的民間委託、自治体業務のアウトソーシングなど公共サービスの提供を民間主導で行うことで効率的かつ効果的な公共サービスを行うという関係に変化しつつあります。こういった状況を踏まえて、当社は指定管理者制度への積極的な挑戦により、社会の流れをリードしてきたつもりです。今後も民需を積極的に拡大していくことはもとより、公共サービスの民間参画を通じて、地域課題の解決に取り組んでいきたいと考えています。

従業員の皆様が、誇れる会社にしたい。

―― 最後になりますが、人材を最重要視する中で、従業員との関係性についてお聞かせください。

棚橋 近い将来には、ソフト、ハードを含めて、従業員の皆様が、本人も家族も「勤務してよかった」と思えるような会社、自分の家族に誇れるような会社にしたいと考えています。そのためにも、人と人との繋がりを大切にすること。そして、スタッフ一人ひとりの創造力を最大限に活かすことで新たな価値を生み出し、付加価値の高いサービスを創り出していくことで、皆様から必要として頂ける会社となれるよう努力してまいります。