市内外に魅力を発信する岐阜県瑞浪市『みずなみプロモーション』の取り組み。地域への愛を数値化した【MIZUNAMI×未来=ミズナミライ値】の向上で持続可能な未来へ

 

瑞浪市

岐阜県瑞浪市では、市民に瑞浪をもっと知り、瑞浪をもっと好きになってもらう「ふるさとへの愛着」を醸成し、「みずなみ愛」を深めるとともに、市外にも瑞浪の産業、歴史、文化、自然などの魅力を発信し、瑞浪の素晴らしさを感じてもらえるように、『みずなみプロモーション』と称して2022年から様々なシティプロモーション施策を展開しています。

このストーリーでは、これらの事業の深堀りや裏側、事業に込められた想い、まちの変化についてお伝えします。

瑞浪市に愛着と誇りを!市民が企画・運営に関われるみずなみプロモーション

2021年に実施した市民アンケートにて、「これからも瑞浪市に住み続けたいと思いますか」の問いに対し、「いつまでも住み続けたい」「当分住み続けたい」を合わせた「住み続けたい」の割合は80.2%を示していましたが、20代30代の若い世代で見ると、「住み続けたい」と思う割合は75.0%と、全体に比べて低い傾向でした。

また、市外住民から見た瑞浪市のイメージ調査でも、20歳から40歳の「名前だけは知っている」割合が44.7%となっており、場所も含めた認知度が非常に低い状態でした。

これらの課題を解決するために、特産品などの地域資源のブランド化の推進や情報発信を強化や、若者が「このまちで暮らしたい」「このまちで働きたい」と感じられるまちを目指すため、どこにでもある魅力ではなく、本市ならではの独自性が何かを考え、若者が瑞浪市に愛着と誇りを持てるような事業を実施することとしました。

また、あくまで主役は「市民」であるため、実施する事業には市民が企画・運営に関われる余白を残すことを意識しました。

化石がミュージカル!?シティプロモーション動画「奇跡の化石」を制作

瑞浪市内にある地域資源を発信することで、市民のシビックプライドの醸成と、本市の認知度向上を図り、交流人口及び関係人口の拡大と、定住人口の増加に繋げることを目的に実施しました。

動画の内容は、将来を担う若い世代が関心を持ち、共感をいだくものとするため、原案については、市内の若者(10代~30代)を対象とした市民参加型のワークショップで決定する手法を採用しました。

結果、「化石がミュージカルする」というぶっ飛んだ原案となり、それを基に、シティプロモーション動画「奇跡の化石」を制作。動画には、ワークショップに参加した市民の他にも、地元の高校生など、総勢50名以上がエキストラとして出演しています。

動画の内容は、18分余りの短編映画で化石に焦点を当てたミュージカルコメディー。

現在、瑞浪市公式YouTubeチャンネルにて公開中で、58万回以上視聴されています。

「化石のまち」瑞浪市で見つかった、幻の哺乳類の化石

瑞浪市は、岐阜県の南東部に位置し、中心部を土岐川が流れ、市域の70%を山林が占めるなど、緑豊かな自然環境を有しています。この緑豊かな自然に包まれたこの地も、太古の昔は海の底でした。そうしたこともあって、まちからはクジラや海獣、ゾウやウマ、貝類などの化石が多く出土し、「化石のまち」としても知られています。

2022年6月には、幻の哺乳類「パレオパラドキシア」の化石が、完全な状態(全身骨格)で見つかり大きなニュースとなりました。

動画の原案は市民ワークショップ。「化石のまち」だからこそ生まれたストーリー

制作する動画のストーリー原案を決める市民ワークショップは、「誰でも書けるショートショート講座 in 瑞浪(講師:ショートショート作家 田丸 雅智氏)を2022年9月より全3回に渡り開催。

23名の方がこのワークショップに参加し、参加者全員で動画の原案となる短編小説(ショートショート)を執筆。共通のテーマは、パレオパラドキシアの全身骨格化石が発掘されたこともあり「化石」に設定し、化石と別のキーワードを組み合わせて物語を組み立てていく手法で執筆してもらいました。

参加者全員による投票によって、ストーリー原案は、「ミュージカル化石博物館」に決定しました。結果が発表されると、会場からは参加者全員より拍手が巻き起こりました。

原案に採択された参加者からは、「化石たちがどういう形でミュージカルをしたり、会話をしたりするのかを文章で表現することは難しかったが、物語を一から創作できたことはとても楽しかった」と喜びの声をいただきました。

瑞浪で生まれ育った人、縁あって瑞浪に移住した人、瑞浪に通勤・通学している参加者全員に、学びあり、賑わいあり、仲間ができ、思い出に残る、そんな「学校」のようなプロジェクトとしてワークショップを終えることができました。

ついに完成した動画「奇跡の化石」は複数の映画祭で受賞

動画の主演には、戸畑 心氏と池田 成志氏を迎え、2023年1月に撮影を実施。また、市民ワークショップの参加者を含む総勢50名以上の市民の方も、エキストラやダンサーとして出演に協力いただきました。

同年3月に、瑞浪市公式YouTubeチャンネルにて動画を公開し、これまでに58万回以上視聴されています。さらに、映文連アワード日本国際観光映像祭など、複数の映像祭で受賞!

自治体がすべてを決定するのではなく、動画の原案に住民の意見を取り入れ、事業に住民が企画・運営に関われる形としたことで、地域の特性や住民の興味に合った事業となり、住民が企画から関わった事業が、受賞し第三者から評価されることで、シビックプライドの醸成にも繋げることができました。

野外映画祭の上映作品の一つとして「奇跡の化石」を上映。市内外から1万人が集まる大盛況のイベントに!

瑞浪市制70周年記念事業として、2023年8月に、映画館のない瑞浪市の緑豊かな公園に1日限りの野外映画ステージを設置し、約20台のフードトラック、70店舗のクリエイター店舗とともに、夏の夜を楽しむイベント「化石と星の森 cinema&nightmarket」を開催。

映画祭の上映作品に一つとして、「奇跡の化石」を上映し、市内外から延べ10,000人が来場する大盛況のイベントとなりました。

BEAMSとタッグを組んだ「地場産品ブラッシュアップ事業」。市内事業者17社が参画し、120品目以上の監修商品が誕生。

2つ目の取り組みは、セレクトショップ「ビームス」に本市の地場産品の監修を委託し、魅力的な新商品開発や既存商品のブラッシュアップを図る事業(地場産品ブラッシュアップ事業)を実施しました。

本事業の目的は、若年層を含む新たな顧客層の獲得による市内産業の活性化と、監修商品のふるさと納税返礼品への活用による寄付額・寄附件数の増加です。さらに、もう一つ重要な視点として、瑞浪市の魅力を再認識してもらうことで、市民のシビックプライド醸成に繋げることも目指し、2022年から継続実施しています。

この3年間で、市内事業者17社が参画し、120品目以上のビームス監修商品が誕生。監修した地場産品は、返礼品としての活用にとどまらず、名古屋や東京でのポップアップイベントでリアルに購入できる場の提供や、ビームス公式オンラインショップでも販売するなど、多角的に瑞浪市の魅力に触れる機会の創出を図りました。

3回にわたるビームスとの商品開発会。回を重ねるたびに細かなブラッシュアップを実施

ビームスとの商品開発会は、参画事業者の事業所で計3回実施。1回目の開発会では、製造工程の視察、企画提案商品以外の既存商品まで幅広く確認を行い、新商品開発の方向性などについてアドバイスを実施。

2回目の開発会では、1回目の開発会以降に事業者が制作した監修商品のファーストサンプルやイメージ図などを中心にして、ブラッシュアップを実施。

3回目の開発会では、最終サンプルの確認、納品数量や販売価格の確定など販売に至るまでの細かな部品のすり合わせを中心に行いました。また、監修商品がお客様に購入してもらい、喜んでもらえるように梱包資材や付属される説明書なども協議を進めました。

監修商品の販売だけでなく、体験型イベントを含んだポップアップストア。瑞浪の多岐にわたり魅力を発信。

事業3年目の2024年は、取り組みの集大成として、ビームスの監修を受けた事業者全ての商品を名古屋市の百貨店内で、ポップアップストアを開催。

ポップアップストアでは、監修商品の販売に加え、参加事業者によるワークショップ形式を主とした体験型イベントを実施。ミニオカリナ(美濃焼)の絵付け体験、アロマスプレー作り、瑞浪の地酒の試飲や特産品のハムの試食、化石採集体験など、瑞浪の持つ多岐にわたる魅力について、多くの市内事業者の皆様の協力により、素晴らしいイベントを作り上げることができました。

メディアの注目を受け、市民からは喜びの声。OEM事業者は自社ブランド立ち上げのきっかけにも

本事業の取り組みが様々なメディアで報じられたことに対し、市民からは「嬉しい」といった声が多く寄せられました。また、名古屋でのイベントでは、瑞浪市民や近隣市町村の方々が多く来場し、「とても嬉しい」「瑞浪市すごい」といった声が聞かれるなど、本市の魅力発信への共感が広がっています。

さらに、参加事業者にも大きな変化が生まれました。商品開発を通じて社員のやりがいや自信につながったという声や、これまでOEMのみを行っていた事業者が、本事業をきっかけに自社ブランドを立ち上げるなど、新たな挑戦が生まれています。

こうした変化を通じ、市内事業者の間でもシビックプライドが醸成され、地域全体の誇りと活力が高まっています。

学生主体の新しい課を新設し、「ミライ創ろまい課」プロジェクトを発足。学校の枠を超えたまちづくりに挑戦

最後に瑞浪市役所「ミライ創ろまい課」の取り組みについて紹介します。

若者のシビックプライドの醸成を図り、市内に高校が3校と大学も立地している利点を活かし、域学連携活動を実効性のあるものとするため、学校の枠を超えたまちづくりチーム、瑞浪市役所「ミライ創ろまい課」を2022年6月に結成しました。

「ミライ創ろまい課」の名称は、岐阜県の東濃地方の方言である「東濃弁」では、「○○しよう」を「○○しよまいか」と言うので、「一緒に未来を創ろう」から「ミライを創ろまいか」→「ミライ創ろまい課」と命名しました。

ミライ創ろまい課では、学生が主体となり、自らが企画した地域活動に大人を巻き込みながら実施することを通じ、若者が進んでまちづくりに参画し、まちに「にぎわい」を創出することを目指して活動しています。活動は月に2回、3チームに分かれて、市内事業者や市役所職員を交えたワークショップを重ね、学生が主体的に企画を検討・実施し、瑞浪市の魅力向上や課題解決に向けて活動中。

ミライ創ろまい課の3チーム・それぞれが違う観点から、瑞浪市の魅力を発信

ミライ創ろまい課の任期は2年。毎月2回、瑞浪市役所へ集まり、各チームに分かれて活動しています。

地域の民間事業者の協力を得ながら、瑞浪市の新たな特産品の開発を目指す「特産品チーム」。日本初の化石検定を実施する「化石検定チーム」。イベントを通じて地域のにぎわいを創出する「イベントチーム」。

瑞浪市の新たな特産品開発に挑む「特産品チーム」

【麦芽パンの商品化に成功】

市内のクラフトビール醸造所と連携し、廃棄麦芽を使用したパンや焼き菓子の開発を行いました。

クラフトビールの麦芽は目が粗く、開発の初期段階では、そのままパンにすると食感に難がありました。製粉の度合いを民間事業者の協力を得ながら試行錯誤したうえで、2023年11月にJR釜戸駅とイオンモール土岐で試食とアンケートを実施し、また、2024年3月に中部大学の協力を得て、味覚の官能評価も実施しました。

アンケートや官能評価の結果を踏まえ、味の改良を実施し、同年4月より市内のベーカリー2店舗で全5種類のパンと焼き菓子の販売を開始しました。

ここでゴールとはせず、現在はパンマルシェ等に出店し、積極的に商品のPRに努めています。

【瑞浪の米を活用した特産品の開発に着手】

新商品の開発にあたり、学生たちは「瑞浪市」という名の由来に立ち返ることに…

『瑞々しい稲穂が、そよぐ風の中で、揺蕩う黄金の波に見える』

そんな美しい風景が、瑞浪市の名前の由来とされています。

ミライ創ろまい課のロゴには稲穂を取り入れており、これは、ミライ創ろまい課に参加する学生には、稲穂のように瑞浪市に美しい波を起こしてほしいという願いが込められています。

「これはもう、お米の特産品しかない!」ということで、瑞浪の米を活用した特産品開発がスタートしました。

開発に協力いただいている民間事業者(日本料理のシェフ)の方に、「今までになく、一緒に取り組んでみる価値があるもの」とオーダーがあり、ミライ創ろまい課で多くのアイデアを提案したところ、「お米でできた佃煮は、今までになくて面白い!採用!」と言っていただけました。

お米のためのお米のお供の誕生の瞬間でした。

現在、お米の佃煮の開発を進めるため、日本料理のシェフの監修を受けながら、試作品の開発に着手。2025年の夏の販売開始に向けて、商品開発を進めています。

古生物学者とともに問題を作成した化石検定チーム。試験日には全国の化石好きが集結

【化石検定を瑞浪市で実施】

「化石のまち」瑞浪市の誇るべき化石について、大人から子どもまで楽しみながら挑戦することのできる検定問題(化石検定)を、ミライ創ろまい課の熱意に動かされた6名の古生物学者のアドバイスを受けながら作成しました。

古生物学者の方には、インタビューを敢行し、専門家としての問題に対する熱い想いや、必要な観点を得ることができました。

【化石検定プレテストの実施】

2024年の瑞浪市化石博物館開館50周年のタイミングに化石検定実施を最終目標とし、2023年は、6名の専門家によって化石検定のたたき台となる50問の問題を作成。「化石の日」である10月15日に、2024年の本試験に先立つプレテストを実施しました。

検定には、全国各地から20名の参加があり、また、テレビ取材や新聞報道など多くの取材をいただき、「化石のまち」として瑞浪市を十分にPRすることができました。

【そしていよいよ化石検定本番】

プレテストを経て、高校生のアイデアや視点をさらに活かして、検定問題の内容などをブラッシュアップを実施。イラストや写真を増やすなど、コンセプトである大人から子どもまで楽しくチャレンジできる検定にするための改良を実施。

併せて、検定に興味がありそうな人が集まる施設(福井県立恐竜博物館など)にチラシの設置や、SNS等でも化石検定のPRを実施しました。

10月19日の化石検定本試験では、PR等が功を奏し、なんとプレテストの3倍近い59名の方が参加。東京都や大阪府をはじめ、神奈川県、千葉県、群馬県、福井県、京都府など、全国の化石好きの方々が瑞浪市に集結。

参加者からは、来年もぜひ開催してほしいと大好評でした。

瑞浪市を舞台としたワクワクドキドキが止まらないイベントの企画と実施を行う「イベントチーム」

【野外映画祭など、市制70周年記念の様々なイベントでコラボ】

イベントチームでは、瑞浪市を舞台としたワクワクドキドキが止まらないイベントの企画と実施を行っています。2024年が瑞浪市制70周年であるため、前年の2023年から、様々な記念イベントが実施されました。

実績としては、上述の野外映画祭「化石と星の森 cinema&nightmarket」の連動企画として、大人向けになりがちな映画祭に、子どもも楽しんで参加したくなるように、「ビンゴスタンプラリー」と「子ども縁日」を開催。イベントでは子どもたちの行列が最後まで途切れないほど大好評でした。

他にも、「水曜どうでしょうキャラバン」や「みずなみ世界一プロジェクト 瑞浪ボーノポークの最大の試食会」などの周年事業に、ミライ創ろまい課としてブース出店。

瑞浪市にどれだけ興味を持てたか?ミライ創ろまい課のミズナミライ値がぐっと上昇!

ミライ創ろまい課プロジェクトにおける成果指標は、東海大学教授の河井孝二氏が提唱する成果指標「mGAP(修正地域参加総量指標)」を採用することとし、本市では呼称を「ミズナミライ値」としています。

ミズナミライ値は、ミライ創ろまい課に参加する学生に「意欲の度合い」を質問するアンケートを実施し、算出された指数に人口をかけ合わせることで算出します。

ミライ創ろまい課参加者の「ミズナミライ値」の計測結果は、活動参加前が「−430.5」だったのに対し、参加後は「374.5」となり、「805」も上昇するという結果に。

①瑞浪市を知人に推奨する気持ちはどの程度ですか?(地域推奨量)

ミライ創ろまい課参加前:−203

ミライ創ろまい課参加後:42

②瑞浪市をより良くするために参加や活動しようとする気持ちはどの程度ですか?(地域参加量)

ミライ創ろまい課参加前:−140

ミライ創ろまい課参加後:122.5

③瑞浪市をより良くしようと活動している人に感謝の気持ちを表すとどの程度ですか?(地域感謝量)

ミライ創ろまい課参加前:−87.5

ミライ創ろまい課参加後:210

ミライ創ろまい課の活動には、学校卒業等による任期満了者を含めると、3年間で100名以上の高校生が参加しており、活動を通じて、若者のシビックプライド醸成は着実に図られています。

今後も4期生、5期生と募集し、ミライ創ろまい課の活動は継続していきます。

住民が自らのまちの魅力を再認識できるように。瑞浪の未来を創り出していく!

人口減少が進む現代において、持続可能な地域を築くためには、単に人を増やすことだけを目標にするのではなく、地域に暮らす住民が、自らのまちに関心と誇りを持つことが何よりも重要です。

シティプロモーションの本質は、一時的な観光誘致や外部へのアピールにとどまるものではありません。住民が自分たちのまちの魅力を再認識し、そこに価値を見出すことが、地域の未来を支える大きな力となります。

今後、人口減少避けられない現実ですが、まちを愛し、地域の魅力を発信する人が増えていけば、その地域は活気を帯び、持続可能なものへとなっていきます。

今後も瑞浪市では、「住民が瑞浪市に関心や誇りをもってもらえるか」を重点においた事業を実施していきたいと考えております。

私たち一人ひとりが、まちの魅力を知り、発信し、共感を生み出すこと。それこそが、瑞浪の未来へとつながる鍵と信じています。