INTERVIEW
Leader's Voice
あふれる情報の中で「見抜く力」を身につけて欲しい
Interview
亀谷 豊 会頭
株式会社アルプスサイン 代表取締役
代表取締役
専務取締役
取締役社長
飛騨市が一つになり、経済を盛り上げていきたい
―― 昨年、70周年を迎えられた今、神岡商工会議所さんはどのような取り組みをされているでしょうか。
亀谷会頭 神岡は全国515ある商工会議所の中でも下から数えて5、6番目ほどの小さな商工会議所です。なぜ「商工会議所」になったかというと、三井金属鉱業さんの神岡事業所があったからだと思います。昭和、平成、令和と1世紀ほどの間に世界がとんでもないほど大きく変わり、さらに、人口減少が始まっている今、神岡商工会議所は新たなスタートラインに立っているところです。
コロナ禍で3年半ほどの長いトンネルをくぐり、2023年の6月頃から社会経済活動は急速に動き出しました。そうはいっても円安で、まだまだ日本は力をつけていく必要があります。地方からも少しずつ声を上げていかなければいけないと思っています。
そこで、7年前に私が会頭に就任してから串刺しの事業にしているテーマが「女性活躍」です。女性がもっている力を引き上げ、見つけ出す、いわゆる人材発掘をするような形の事業で、まずは短時間でも働いていただくことが女性活躍のスタートではないかと思っています。ある時、育児所を立てる計画を「大人ばかりで決めて良いのか」とおっしゃった方がいて、私も「そうだ、切り口を変えなければ」と気づいたことがあります。女性活躍もこの考えをアレンジして進めていきたいと思っています。
―― 地域で動き始めている取り組みがあれば教えてください。
亀谷会頭 飛騨市はそれぞれ長い歴史と文化、伝統をもった地域が集まり、一つになった市です。地域によって川筋が違い、高山市の川上岳から古川を通って北へ流れて神通川となる筋と、乗鞍岳から上宝、神岡を通って神通川と一緒になる筋があることから、古川は盆地で、古川から山を越えた場所に神岡があります。地形的に普遍なところがあるうえ、古川町商工会と神岡商工会議所が別々に活動をしているのですが、広域で地域経済を起こしたいと考え、経済活動を馴染ませていこうとしているところです。
―― どのように馴染ませていかれる予定でしょうか。
亀谷会頭 商工会と商工会議所は同じ経産省の中にはありますが、法律が異なるので重ねることはできません。そこで、2022年に神岡商工会議所、古川町商工会、飛騨市経営者懇談会、飛騨市の官民が一体となり「飛騨市経済連合会」を立ち上げました。十六総合研究所さんにバックアップしていただきながら、課題解決に向けて模索しているところです。いよいよ今年、5月の総会後に本格的なスタートをします。商工会議所や商工会をつなぐパイプ役として、また、いわゆるまち起こし団体として取り組んでいく予定です。
―― 経済発展のためのホテル誘致などはいかがでしょうか。
亀谷会頭 2027年にハイパーカミオカンデが稼働を始めると、世界中から120名ほどの研究者が神岡に訪れます。そのための準備をしなければなりません。運営などすべてをお任せできるようなホテルさんに打診をしているところです。ビジネスホテルをリフォームした、25部屋ほどのホテルが5月から稼働をされるなどの動きはありますが、まだまだホテルは必要です。ホテルの稼働は地元の雇用を生みますし、施設から近い神岡のまちなかで飲食をしていただけるような準備も飲食組合さんにお願いしているところです。
世代間に考えの違いがあることを念頭に置き、自ら行動
―― 亀谷会頭が最近、気になっていることを教えてください。
亀谷会頭 今の若い方たちの間で、SNSなどで使う句点に威圧感を覚えるという「マルハラ」が気になりました。確かに、私のところへ届く20代前半のスタッフからのショートメールには、句点や読点がないメッセージがあります。なぜ句点をつけないのか紐解いていくと、もともとは相手が読みやすいようにと、文章の区切りで句点をつけずに改行することが分かりました。要するに、今の若い世代は相手が読みやすいようにと思って句点を使わないようです。私たちの世代は反対に読みやすいように句点をつけていますので、何が正しいのか、相手に伝わるようにするためにはどうするのか、という考えの差が出てきます。普遍的な歴史、伝統、文化は変わらなくても、それ以外のものが変わってしまうことに、私は最近、最もショックを受けました。もう、「時代の流れ」の一言でくくれない問題だと思いました。
―― 世代間の考えの違いについて、社内ではどう擦り合わせていますか。
亀谷会頭 弊社の月2回の会議でもよく話すのですが、「時代背景は時間軸なので横軸。それに対して、縦軸と縦軸の間が世代である」ことです。縦軸の間隔は要するに「ひと世代」。親から子、子から孫へと次の世代への区切りが縦軸になると思います。それに従うと、Z世代 と言われている若者は私から2世代くらい向こうにあることになります。そのため、若い方たちと仕事をしていたら、どこかでハレーションが起こるのは当たり前です。「何が正しいか」はその世代で受けた教育が大きく左右するのではないかと、個人的には考えておりますので、弊社では独自の教育をして、擦り合わせの方法を見つけ出そうと努めています。
商工会議所で相談を受けていると同じように、「考えの差」を感じることがあります。例えば、助成金や補助金ばかりに頼って運営する企業さんがありますが、会社として稼ぐ力をもたないと将来はないのではないでしょうか。このようなことを言うと、若い方達からは老害と思われるかもしれませんが(笑)、アドバイスの一つとして聞いていただければと思います。商工会議所の取り組みに自ら行動に出ることが多いので、職員から「会頭、動きすぎです」と言われていますが、賞味期限内にみなさんのお役に立たなければいけないという思いで活動しています。
ネットだけでなく、人の話を聞くことも大切にして、何が正しいのかを判断して欲しい
―― 亀谷会頭から若者へのメッセージをお願いします。
亀谷会頭 「見抜く力」をもちましょう。若い方に「情報はどこから取りますか」と聞くと、最初に出てくるのがネット、次にテレビ、新聞だと答えます。今は新聞もスマホで読めてしまうくらいなので、新聞の活字を読むことが少なくなっていますが、いずれにせよ、情報の取り方はさまざまあります。情報は膨大な海です。「膨大な情報という海の中で、あなたはどうやって泳ぎますか」ということです。陸を目指すために、情報をどのように取って、どう処理していくのか、そして、何が正しいのかを見極めることが必要です。
私は歴代会頭の中で最も多く、講演会を開催していますが、その理由は「人の話を聞く」部分の情報を大切にしているからです。耳から情報を入れて頭で整理し、プラスアルファの情報としてネットや新聞を活用し、それらを合算して、そこで初めて何が正しいのかを判断すると良いでしょう。新聞は3紙を読むのがおすすめです。なぜかというと、1紙だけでは、書いてある数字が正しいのかを判断できないからです。新聞は一つの報道に対して、それぞれ使っている数字が異なる場合があります。いくつかの新聞を読んでおくと、ここはこの数字を使っているな、ここはこの数字だ、と言うように見抜く力が身につきます。見極めができるようになってはじめて、AIやIOTなどのデジタルの力が生きてくるのだと思います。デジタル社会の中でコントロールするのは自分自身です。そのために、見る目を養い、聞く耳を養い、何が正しいのかを見抜く力を身につけて欲しいと思います。
神岡商工会議所
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