「行動力と思いやり」
思いやりをもって行動すれば、
たくさんの人が光り輝く
土岐商工会議所会頭
大島健太郎さん
(大島電氣工事グループ 代表取締役会長)
職員のきめ細かな対応で事業者を支援
ーー 土岐商工会議所さんの取り組みについて教えてください。
大島会頭 私たちの役割は、中小企業、小規模事業者のお手伝いをすることです。歴代の会頭はみなさん立派な方ばかりですけれども、私は人前で話すのも苦手ですし、カリスマ性のある人間ではありませんので、職員のみなさんがしっかり仕事をしていただけるような体制を整えていくのが、商工会議所での私の仕事だと考えています。
キャッチフレーズを「行動力と思いやり」としましたが、私の思いを汲んでいただき、職員のみなさんは行動力と思いやりをもって取り組んでいただいています。事業者支援に関しては、経営支援員が4名おり、きめ細かな対応によって成果が出ています。特に、補助金関連では、支援員1名あたりの採択率は岐阜県下でトップクラスを誇ります。
ーー 行政との連携はいかがでしょうか。
大島さん 会頭に就いてよく分かったのですが、商工会議所は行政とつながりをもつことが大事だと感じています。本来、政治と切り離さないといけませんが、市町村や市議会議員のみなさんとのつながりは私たちの仕事に直接、影響を与えるのではないでしょうか。私自身も加藤淳司市長と面会し、こちらの要望を伝えながら、また、行政の状況をお聞きしながら、土岐市の活性化を目指しています。令和3年度は行政からの相談を受けて、新たに土岐市独自の事業者向け補助金事業を実施していただきました。今は事業者のみなさんのアフターフォローをしながら、補助金の成果を検証しているところです。この事業により、今まで以上のパイプができました。
土岐市の「顔」をつくり、
今後の活性化に期待
ーー 産業、観光についてはいかがでしょうか。
大島会頭 土岐市は美濃焼産業が盛んで、支援事業にも取り組んでいますし、精力的に事業に取り組まれている若手経営者がたくさんいるので、経営者養成をしながら、美濃焼の発展を願っています。また、2027年、リニア中央新幹線の開通に伴って中津川市に駅が開設されるので、東美濃6市の多治見市、中津川市、土岐市、瑞浪市、恵那市、可児市の各商工会議所が一つになり、東美濃エリアの観光需要の拡大による地域活性化を進めています。
合わせて、土岐市駅周辺にも活気を作らないといけないと思います。駅前の少し寂しい雰囲気は、土岐市の今の経済状況と同じ、という印象をもたれてしまうかもしれません。
土岐市を活性化するには、強引にでも引っ張ってくれるりーダーが必要であり、そうした人材を養成することが私の使命だと思っています。特に若手経営者を育成したいという思いで「土岐青年経営塾」を立ち上げました。人づくりをすすめることで、今後の土岐市に期待をしたいと思います。

土岐美濃焼まつり(コロナ以前の開催の様子) ※毎年5月3日~5日に開催

土岐美濃焼まつり(コロナ以前の開催の様子)

「土岐青年経営塾」の設立を記念した、経営塾の委員の皆さんと塾生全員の集合写真(前列中央は、大島会頭と土岐青年経営塾の委員長を務める石黒副会頭)
ーー 土岐市にはアウトレットモールもありますし、2022年秋にはイオンモールもオープンしますね。
大島会頭 土岐プレミアム・アウトレットには年間700万人のお客様が来訪され、非常に活気がありますが、お客様は高速道路で来て、そのまま帰ってしまう方がほとんどです。中心市街地まで入っていただけないことを考えると、やはり、土岐市駅周辺の発展は大切なことだと思います。
イオンモール土岐の開業をチャンスと考え、商工会議所では行政、観光協会と連携した新たな販売につながる事業を現在進めています。
「(仮称)イオンモール土岐」と「土岐プレミアム・アウトレット」、さらには、土岐市観光協会が運営する、「もとてらす東美濃」も合わせ、相乗効果を高めながら、土岐市の顔を作っていこう、そのような動きをしています。

テラスゲート土岐まちゆい内にある「もとてらす東美濃」

「もとてらす東美濃」は東美濃6市1町の魅力を発信している
光をお客様に当てるため、社員が輝く
ーー 温厚な大島会頭ですが、ご自身の会社の立ち上げについて教えてください。
大島会頭 私は名古屋市出身です。両親が土岐市の柿野温泉で旅館経営を始めるにあたり、小学2年生で土岐市に引っ越してきました。中学卒業後、多治見工業高校電機科(一期生)を卒業し、4年ほど家業の旅館の経理を担当し、この時に経営の厳しさを知ることになりました。その後、独立を見据えて、多治見市の電気工事会社にて10年修行し、昭和54年、大島電氣工事を創業しました。最初は工具を持って軽トラで妻と電気工事に周る日々でした。10年後に当時の最新鋭のキャドを購入、下請けや公共工事に依存せず、独自の路線で事業を行い、今は水道工事やリフォームなど、住宅関係の事業も行っています。私的なことはなかなか判断できませんが、仕事となれば決断は早く、ここまでやってきました。自分の実体験を踏まえて、土岐商工会議所のキャッチフレーズに「行動力」を入れました。
ーー 会社経営で大切にされていることはどのようなことでしょうか。
大島会頭 一番大事にしてきたのは「社員を大事にする」ことです。会社というのは社長が真ん中にいて、周りに社員がいる。そして、その外にお客さんがいます。社長が一人光り輝いていても、光は社員にまでは当たりますが、社員が輝かなければ、お客さんに影ができてしまう。社員一人一人が輝けば、お客さんに光が当たります。だから、社員を大切にしなければいけません。
ーー 「社員を大事にする」を実感されたエピソードを教えてください。
大島会頭 いろいろな人生、長く生きている中で「感動」という言葉はよく使われますが、自分の人生を振り返り、今までに感動したことを教えてください、と言われたら、みなさんは思い出せますでしょうか。私は、一つだけあります。15年ほど前、還暦のお祝いにと、30名ほどで同年会を行った和倉温泉の加賀屋さんで体験しました。加賀屋さんと言えば、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で36年連続総合日本1位に選ばれている旅館です。僕は同年会の会長を務めていましたので、宴会が始まる前に舞台上で挨拶をしたのですが、一緒にお祝いをするはずだった一人がたまたま、半年前に交通事故で亡くなってしまって、本当はここに連れてきたかったねと話をしました。そうすると、挨拶をしている最中に、会場で何かごそごそやっているのです。何をやっているのかなと思いながらごそごそしている方に目をやると、仲居さんが陰善をひとつ据えてくれていたのです。2つ3つの料理と一輪挿しに花を添えてくれて。その思いやりからの行動力に私は感動したのです。
先ほども言いましたように、社員が輝いてくれているからこそ、このような行動ができるのではないでしょうか。仲居さんの思いやりが私たちに伝わってきたのです。脳裏に焼き付いている感動なんて一生涯にないでしょう。加賀屋さんが何年も常にトップに君臨できる企業であり続けるのは、社員のみなさんが本当に一生懸命、お客さんのために働こうという意欲があるからこそ、感動が生まれたのだと思いました。
この感動を受けて、私が会頭就任をした際、「行動力と思いやり」をキャッチフレーズにしたのです。職員が会員のみなさんを大事にすることで、会員のみなさんも一生懸命、事業に取り組んでもらえることが一番ではないでしょうか。
相手のことを思い、
生きていくことが大事
ーー 大島会頭は社員のみなさんとのコミュニケーションを大事にされてきたのでしょうか。
大島会頭 コロナ感染症が流行する以前、一年に一度、自宅に全社員を招いてのおもてなしを10年以上、続けてきました。社員が80名ほどいるので、毎週10人程ずつ招き、2ヶ月かけてベランダでバーベキューをします。肉は私が買い出しに出かけ、飛騨牛などおいしいものを食べながら、仕事抜きの環境でいろいろなことを話し、仕事への活力につなげていただいています。
社長職を息子に任せて4年ほど経ちますが、私が社長を務めていた時は、一人ずつ飲みに誘うこともありました。なかなか会社では言えないことも、飲みながらだと言ってくれる。遠慮しないように1対1で、冗談も交えながら、社員のことを考えることができる時間でした。
コロナが落ちついたら、ぜひ、商工会議所の職員のみなさんもバーベキューにお招きしたいと思っています。プライベートでは月に2、3回、女房とゴルフに行きます。女房と一緒のゴルフが一番あんきでいいですね。
もう一つは、旅行です。今はコロナでなかなか行くことができないが、毎年、妻と海外や国内を旅行して楽しんでいます。そんな生き方をしています。
ーー 若い方へメッセージをお願いします。
大島会頭 「思いやり」やね、やっぱり。人間は思いやりが大事だと、何ごとに関しても思います。相手に対して伝える言葉は相手はどう感じてくれるのか、また、相手の言ったことをどう思い、感じるか。常に思いやりを持ちながら生きていくことが大事なのだと思います。
■土岐商工会議所
〒509-5121 岐阜県土岐市土岐津町高山4
セラトピア土岐4階
TEL.0572-54-1131
FAX.0572-54-1188