商工会議所では情報発信を強化
必要な情報を取り、将来へ繋げて欲しい

瑞浪商工会議所会頭
景山助夫さん
(株式会社東岐空調 取締役会長)

行政の支援を受けながら、会員の問題解決をスピーディーに進める

-- 商工会議所で今、取り組まれていることを教えてください。

景山会頭 会頭就任後にまず手がけていることは、素早い情報発信と会員さんが抱えている問題点を浮き出して提言書や要望書を行政や各種団体に提出することです。情報発信についてはDXを大事にし、会議所で得た情報をいち早く会員さんに届けるために、情報を一斉発信するシステムを作っています。会員さんには情報を自由に利用していただき、興味のある内容であれば詳細を説明しますし、分からないことについてもどんどん問い合わせていただきたいと思っています。

また、私は副会頭を5年務めさせていただきましたが、企業が抱える問題を全て把握できていないことや、個々で問題を抱えていてもそこで終わってしまうことが課題でした。そこで、いろいろな業種の問題点を炙り出し、会議所の名前で提言書や要望書を提出していくことを考えています。常議員をはじめ、商工会議所の組織に若い経営者やさまざまな業種の方に入っていただき、これら2点をシステム化して、早急に取り組んでいく予定です。

-- 問題点の炙り出し方や解決策は何かお考えでしょうか。

景山会頭 都市部の副業人材のマッチングツールを活用します。サラリーマンの副業が解禁されたことを受けて、こちらが登録すると、それに手を挙げてこちらが持っている課題に対してアドバイスをしていただくマッチングです。必要であれば、現地へ来て、見て、改善策を提案していただきます。プラットフォームは、私が顧問を務める東濃信用金庫が持っている「Skill Shift」を利用します。みなさん、問題を抱えていてもツール自体を知らなかったり、ツールを知っていてもコストがかかるからと二の足踏んでしまうので、商工会議所でアシストしていきます。運用コストに関しては瑞浪市で助成していただきたく、提言書を提出しました。

-- 行政との連携について教えてください。

景山会頭 市長と会合する機会を多くもち、情報を密にして連携していきます。さらに、現在、事務局が瑞浪市役所に置かれている瑞浪市観光協会との連携も深めていきたいと思います。市からの要望と商工会議所からの要望、お互いの力を貸し借りして、是々非々でスタートしていく気持ちで取り組んでいきます。

子ども時代に見た、勢いのある窯業界をこれからも残していきたい

-- 瑞浪市の印象をお聞かせください。

景山会頭 私は旧恵那郡陶町で生まれ育ちました。緑や自然が豊かなところで、それらを残しつつも伝統産業を継続、発展させていかなければいけない、という思いがあります。陶町は窯業が盛んなまちで、輸出量も多く、高度成長期は煙突から黙々と煙が上がっていた光景がありました。他県からの人口も多く、陶町だけでひとつ町として運営できるほどの力があったのではないでしょうか。当時の商店街は肩がふれあわないと歩けないほど人がいて、八百屋、喫茶店、床屋もたくさん、寿司屋やかぶき舞台もあった、縁日状態の毎日でした。そうした華やかな時代を見てきているので、もっと窯業界が発展できるように尽力しないといけないと感じています。

窯業が盛んだった頃の煙突のある風景

-- 後継者不足の課題にはどのように取り組まれる予定でしょうか。

景山会頭 美濃全体で言えることですが、伝統産業の火が途絶えそうな中でも、技術を継承されているところがあります。窯業をしっかり守っていくためにも、商工会議所で力添えができればと考えています。

窯業以外も同じような状況を踏まえ、私の就任3年間のもう一つの柱として、後継者と創業支援がマッチングできるところまで掘り下げたいと考えています。中小零細企業の57%ほどが後継者難の時代です。先日、日本政策金融公庫が行なっている事業継承マッチング支援のイベントに、商工会議所の会員さんが参加してくださいました。後継者がいないということで、店舗の1階、2階、別棟それぞれでも良いので、家賃のみで運営できる方を探されていました。何人かお話があったようなので、このような事例があることもいち早く会員さんに伝えていきます。また、瑞浪市の空き家バンクと連携し、例えば、「有名飲食店の味を継承してくれる若者を探しています」と、全国に発信することも考えています。

-- 全国に向けた発信も必要でしょうか。

景山会頭 都会には、田舎でチャレンジしたいと考えている若者がいると思います。一つ成功例を紹介するとイメージが湧きやすく、そうした意味でも観光協会との連携、行政からのバックアップをいただきながら、多くの事業に取り組んでいきたいと思います。

出社をしなくてもネット環境と信用で、次の仕事に繋げる

-- 会頭は「株式会社東岐空調」を起業されていますが、起業の経緯を教えてください。

景山会頭 私は20年勤めていた東濃信用金庫を1991年(平成3年)に退職した後、名古屋の会社へ1時間40分かけて通勤していました。当時は携帯電話がまだ普及していない頃で、通勤往復の3時間強、なにも仕事ができない状態でした。これでは、まとまな仕事ができないということで、1998年(平成10年)に起業しました。今は2020年(令和2年)に引退して取締役会長になり、娘婿が取締役代表を務めてくれています。

起業することは簡単ではありませんが、今は少しの資本金と知恵と情報があれば商売を始めることができます。起業当時は私も1人から始めて、いまだに14人ですけど、25年間、半分以上の社員は出社せずに仕事をしています。働き改革の先駆けみたいな感じですね。

-- 当時から社員さんは出社することなく、仕事をされているのですか。

景山会頭 本社は岐阜県にありますが、現場は愛知県と三重県が大半です。そのため、本社はここにあっても、仕事のあるフィールドに社員を配置してコントロールすれば、通勤時間と交通事故のリスクを省くことができます。弊社は空調設備や換気ダクトを取り扱っており、アフターフォローの仕事から入っていったので、1時間以内にお客様のもとへ行き、まず安心していただくことを大切にしてきました。すぐ現場にかけつけて、サービスマンが到着するまでお客様と対話しながら寄り添うことをコンセプトにしています。

最初のスタッフが愛知県に住んでいたので、お客様のもとに近いところに社員はいた方が良いだろうということで始まりました。自宅から現場へ直行するので、車、携帯電話、ETCカード、プリンターなどを支給しています。給料は年俸制。今でこそ在宅勤務の流れができてきていますが、このような働き方もできるんだよ、ということを実践してきました。この方法は今の社長も継続してくれています。

今はネット環境が整っているので、図面も積算もデジタル化してメールで送受信するだけ。弊社は営業スタッフがいないばかりか、お客さんのところへ出向かずに電話で値段を決めます。これは信用があるからできること。現場スタッフが元請さんときっちり打ち合わせをして図面を出して、下請けさんが入った後に図面通りにでき上がって、きちっと工期に終わらせることができる、という仕事を長年やっています。この信用が営業につながっています。

-- そうすると、現場管理者の仕事ぶりが重要になりますね。

景山会頭 先ほども申したように、お客様に寄り添う仕事をしなさいと言っています。もし、早くその日の仕事が終われば、その後映画を見に行こうが、休もうが問題ないよ、という働き方をしています。その代わり、空調関係は深夜のトラブルがつきもののため、深夜対応もしています。

田舎にいても人材が繋がり、自分が見本を見せれば、社員も動いてくれます。反対に、まちにいる人が田舎でやりたいことを募集してコントロールすることもできる。どこでもビジネスはできるのではないかと思います。そう考えると、後継者不足、起業という部分で商工会議所がアシストできることはたくさんあります。

週末は家族との時間や、趣味のバイクで息抜きを

-- 忙しい合間を縫っての楽しみやご趣味を教えてください。

景山会頭 楽しみは月に数回、かみさんとドライブに行ったり、おいしいものを食べたりすることです。趣味はバイクです。65歳を過ぎてから普通二輪免許、66歳で大型二輪免許を取得し、バイクを4台所有しています。この一年間で富士山一周、伊豆半島一周、四国一周、北九州一周、御嶽へ行ったり高山へ行ったり。先日は白川郷から福井まで行ってきました。バイクに乗っていると、幅広い年齢層の方と交流をもつことができます。バイク仲間も商工会議所の職員、銀行の役職に就いている方、職業、年齢もバラバラです。

-- バイクの魅力はどこにありますか。車種も教えてください。

景山会頭 車種はトライアンフの限定車、ヤマハのボルト、モンキーの125 とゴールドモンキーの50です。風をきって走り、いろいろな景色が見えてくるところに魅力を感じます。景色を楽しんだり、訪れたまちの空気を感じたり。犬山城が見えるところで一番いいロケーションにバイクを置いて一緒に写真を撮る楽しみ方もしています。

また、こんなところにお店があるな、気になるなとか、車では見逃してしまうお店や車ではあまり入って行かない細い道を走るとさまざまな発見があります。発見したお店は次のかみさんとのドライブで立ち寄る楽しみにもつながっています。

景山会頭と愛車

犬山城をバックに

バイクが仲間との出会いにつながった

-- 仕事とプライベートの切り替えがお上手ですね。

景山会頭 よく言われますし、自分でもそう思います。役職をいくつもいただいており、毎日忙しくしていますが、土日は比較的自分の時間ができるので1日はかみさんと、1日は自分だけの時間として使い分けています。

常に情報を取り入れて必要な情報を自分のものにし、イノベーションを起こして欲しい

-- 景山会頭はさまざまなチャレンジをされていますが、情報はどのようにとられていますか。

景山会頭 全てスマホで情報を得て、気になったニュースはメモに保存してすぐ見られるようにしています。写真は5万点以上、動画は2千点以上、スマホの中に入っていますが、フォルダ分けをして必要な時にすぐ取り出せるようにしています。スマホやアプリを自分で使いこなせないと、社員にも指示できませんから。管理さえできれば、さまざまなことにチャレンジできると思っています。そういうことも皆さんに伝えていきたいと考えています。

-- スマホも情報も使いこなされていますね。

景山会頭 実は、メカには弱いのです。取扱説明書は読まずに最初から触っていくタイプ。ただ、連絡ツールとして、ライン、シグナル、チャットワークなどを用途によって使い分けています。銀行口座、仮想通貨、FXなどもスマホでできる時代です。それでもスマホの機能はもっとあります。どんなことでも、自分がやってみることでメリットもデメリットも分かります。そのような環境へ入っていくことが自分のスキルを上げる一つの方法だと思っています。

情報についてもどんどん受け取って、必要なものだけを取りにいけば良いのです。会議所もどんどん情報を発信していきますので、ぜひ、その情報を自分のものにしていただき、新しいイノベーションに繋げて欲しいと思います。

■瑞浪商工会議所
〒509-6121 岐阜県瑞浪市寺河戸町1043-2
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FAX.0572-67-2230