【恵那商工会議所】

恵那商工会議所会頭 阿部伸一郎さん

恵那商工会議所会頭
阿部伸一郎さん
(セントラル建設株式会社 代表取締役)
竹中 道明 さん副会頭
竹中 道明 さん
(愛中理化工業株式会社
代表取締役)
髙木 良直 さん副会頭
髙木 良直 さん
(協和ダンボール株式会社
代表取締役)
藤下 和也 さん副会頭
藤下 和也 さん
(株式会社デジタ
代表取締役)

【阿部会頭メッセージ】

中山道、山城など、恵那市の資源をいかした世界最大の成⾧産業「観光」に注目

地域の課題をビジネスで解決する

-- 現在、恵那商工会議所で力を入れて取り組まれている事業を教えてください。

阿部会頭 現在、恵那商工会議所にはおよそ 1200社の会員がいますが、「後継者がいない」という理由で退会される方が後を絶ちません。日本全体でみると、黒字のまま事業を辞められる方が 55%もいるというデータもあります。恵那市にもキラリと輝くような店舗や企業が廃業しており、非常にもったいないと感じています。M&A を仲介する業者は多く存在しますが、彼らの網に掛かるのは一定規模以上の会社に限られています。よって、地域で古くから商いをしてこられた小規模な商店さんや事業所などは、彼らの目には止まりません。地域に密着した商工会議所のみができる仕事です。商工会議所そのものがスモールM&Aのプラットフォームとなり、新しい担い手に繋いでいく取り組みに力を注いでいます。1階が店舗で 2 階が住居と商いと生活とが一体化しているケースが非常に多く他者に承継するのに難しい面もありますが、今後、きちんと閉じるより誰かに承継してもらう方が、売り手にとっても地域にとってもメリットがあることをしっかりお伝えしながら、これを乗り越えていこうと考えています。

恵那商工会議所会頭対談

-- 後継者不足など、人口減少による課題解決に向けた取り組みを教えてください。

阿部会頭 恵那市長から、「人口減少で生ずる様々な問題を先ずはビジネスで解決できないか考えてもらい、その上で足りない分は行政で支援していく」と言っていただいております。

具体的には、お正月の 1 月 7 日の福市「七日市」の例があります。かつては七日市が楽しみで、20 キロ以上も先から未明に家を出て歩いてこられた方もいたほどの規模のお祭りで、つい数年前まで賑わいをみせていました。ところが、明治の時代から神社周辺の 3つの町内で運営されてきましたが、少子高齢化で動ける人材が不足したことから、次第に規模が小さくなり、とうとう今年は露天商がなくなり寂しい福市になってしまいました。つまり、露天商との事前打ち合わせや当日の交通整備計画などを担う人材が町内からいなくなってしまったのです。そこで、これをビジネスで解決できないかということです。

恵那には私が代表理事を務めている DMO 法人の「ジバスクラム恵那」があります。来年からこの法人が中心になって運営をしようと計画を立てています。こうすれば前述の3町も来られるお客さんも悦び、地域全体も潤う、まさに「三方よし」になるわけです。この方法を確立して「ジバスクラム恵那」がノウハウをもつことができたら、そのほかの地域のお祭りやイベントも私たちが運営することができ、DMO としての本来の役割を果たせます。

人口問題で生じる諸問題をビジネスで解決し得るのは商工会議所しかないと思っています。事業承継、観光、交流人口の増加など数々の諸問題をビジネスで解決していくプラットフォームになっていくことができれば、と思っています。

七日市の様子
七日市の様子

キーワードは「脱・物見遊山」。恵那の豊富な観光資源をいかした体験型観光地に

-- 現在の恵那市に対する想いをお聞かせください。

阿部会頭 2027 年以降にリニア新幹線が開業すると、時間軸を基に描く地図が激変します。この地域の人が飛行機に乗るには、セントレアに出るよりもリニアに乗って羽田に行く方が早くなります。東京が近くなるということで、世の中がガラッと変わると思います。

品川駅から名古屋駅の間には 4 駅(神奈川県駅、山梨県駅、⾧野県駅、岐阜県駅)が開設される予定です。これといった観光資源がなく、SL に乗ることが目的となっている大井川鐵道に人が集まるように、世界から国内からもリニアに乗ることを目的とした観光客が増えると思います。そうすると、4 駅の中で最も降りたくなる駅を作ることが必要になります。ずいぶん昔の話ですが、建設中にも関わらず凍結されてしまった新幹線の栗東駅がありました。京都駅に近すぎる。新駅は不要と言うのが反対の主な理由でした。しかし、地価が高く駅周辺に大型バスを停められる駐車場がない京都駅の代わりに、土地が安価でタップリと確保できる栗東駅で修学旅行などの団体客を乗降させた方がより便利になるという発想の基に建設に取り掛かった駅でした。栗東駅で下車すればタクシーやバスで郊外へ行くにも渋滞する京都のまちなかを抜ける必要がなくなったはずです。岐阜県駅も全く同じです。名古屋では確保不可能な広大な土地を有効活用し、リニアと陸上交通のハブ駅となることで、存在価値が大幅に向上します。駅前に大きな駐車場を用意し、混雑する名古屋市内を通らずに名古屋郊外や飛騨高山、木曽、豊田へ行くことができます。リニアと陸上交通のハブ駅にすることを考えてまちづくりを進めれば、観光にもビジネスにも大きな期待がもてます。日本全体が人口減少傾向にある今、定住人口を増やすことは難しくても、交流人口を増やすことは可能です。買い物客、ビジネス客、特に観光客を増やすことができると思います。

-- 観光客を増やすために、どうのような対策が必要だと思われますか。

阿部会頭 リピーターを増やすためのキーワードは、「脱・物見遊山」です。世界遺産は世界に千以上あります。観ることを目的とした観光はリピーターを生みません。観光はまちを上げての総合産業ととらえれば観光の切り口は無限に広がります。例えば中山道や山城などの歴史や文化も観光資源です。あるいは、恵那の自然が可能にするボート・カヌー、SUP、ボルダリングといったスポーツ観光、また、郷土が生んだ偉人、佐藤一斎を学ぶ知的観光など等、あらゆるものが観光資源となります。

岩村城跡の六段壁
岩村城跡の六段壁
笠置峡
笠置峡
-- 会頭が注目してる観光スポットはありますか?

阿部会頭 人里離れた村に観光客が押し寄せる新聞記事を読みました。⾧年、京都に住んでいるアメリカ人のアレックス・カーさんが徳島県の祖谷(いや)にある山奥の古民家を 5、6 改修された宿があります。そこに欧米の富裕層がこぞって宿泊に行かれるそうなのですが、何があるかというと、何もないんですよ。彼らは 2 週間とか、⾧期間滞在するようですが、何も考えず、そこの空気吸っているだけで幸せを感じるそうです。「体験」と聞くとアドベンチャーを想像しますが、日本らしい土地柄にある古民家で泊まること自体が体験になっている例です。自然、風景、素朴さ、何もないのも観光資源なのです。

恵那市の岩村には江戸時代中期から末期にかけて栄えた問屋の木村邸や商家の勝川家があり、これらをホテルにしてはどうかと言う提案も出ています。先ほどの祖谷の例でわかる様に現代風に設備を整えた古民家ホテルは人気の的です。加えて岩村の城下町はどこにも負けない風情と生活感に溢れています。ここにインバウンドが泊りたくなるホテルがあれば鬼に金棒です。全国には宿泊施設に改装している文化財が 9700 棟(文化庁による)もあります。文化財は触れてはならない物といった、マインドを変えないといけないと思います。

木村邸
木村邸
-- 今、動き出そうとしている観光素材はありますか。

阿部会頭 今、明知鉄道で SL の復元運転をしようと試みています。ただ、よほど人が集まらない限りは赤字になってしまいます。でも、それが及ぼす経済効果は出ます。地域の飲食店や宿泊施設が潤うことは間違いありません。恵那市は SL 機関車を 2両所有しています。 維持管理は恵那市が行い、明知鉄道に SL を貸す方向で赤字を極力減らすことができるのではないかと思います。恵那市が観光振興で SL の運行に取り組んでいるとなれば、全国からふるさと納税等で応援してくれる人も少なくないと思います。

明知鉄道のSL
明知鉄道のSL

正しい考え方をもち、心の姿勢を正すことからビジネスが始まる

-- 読書がお好きとのことですが、最近はどのような本を読まれていますか。

阿部会頭 今は大河ドラマに刺激を受け、平安時代に凝っています。藤原摂関政治の時代を中心に勉強し直しています。平安時代は天皇が力をもっていた時代から摂関政治を経て武家、武士が出てきて、日本のパワーバランスが変わった 400 年です。先日は『紫式部日記』を読みました。藤原道⾧に頼まれて宮中に上がった紫式部が宮中の様子を書いた日記で、中宮彰子の出産の話に始まり、有名な清少納言を批判したページがあったりと興味深く読みました。

-- 注目している人物はいますか。

阿部会頭 時のスーパースター、藤原道⾧です。ただ、平安時代を勉強していると、ほとんどの名字が藤原で、名前が一字違いだったり逆だったり、みんな親戚ですし、こんがらないように相関図を書いて読んでいます。勉強したことをアウトプットしないと本当は身につきません。読んだ本の内容や著者を会社の広報誌「せんとらるライナー」で紹介することが私にとってのアウトプットです。最近では、川端康成の『伊豆の踊子』やセルバンデスの『ドン・キホーテ』を載せました。次回は勿論、紫式部を紹介します。

あと、講演を引き受けるのも勉強になります。一番大きなものは、滋賀大学で600 人の学生に向けて「イノベーションのきっかけは身近なところにある」をテーマにした授業を3年間させてもらいました。

-- 若い方へ向けてメッセージをいただけないでしょうか。

阿部会頭 私の尊敬する経営者に、京セラを立ち上げた稲盛和夫さんがいます。氏が開催していた盛和塾で、人生や仕事の結果は[考え方 × 熱意 × 能力]だと教えてもらいました。熱意と能力は 0 点から 100点まであるけれども、考え方はマイナス 100 点からプラス 100 点まであり、掛け算のため考え方が間違っていると能力と熱意があるほど、より甚大なマイナスに陥ってしまいます。正しい考え方を身につけるために、いろんな勉強をして欲しいと思います。読書、人との付き合い、スポーツなどです。そして、しっかりと挨拶をするとか、礼儀を正すとか、約束を守るとか、心の姿勢を正すことです。

人としての基本を養うことこそが、全てにおいてより良い結果を残すことに繋がると思います。

 

恵那商工会議所
〒509-7203 岐阜県恵那市⾧島町正家 1-5-11
TEL.0573-26-1211
FAX.0573-25-6173