岐阜の魅力に気がつくつこと、若者の考えを認めること
幸せな未来につなげるために発想の転換を

衆議院議員
野田 聖子 さん

岐阜にしかない特徴にもっと気がつき
経済、子育てに強い地方に

-- 野田議員から見る、岐阜県の印象をお聞かせください。

野田議員 私は岐阜で生まれ育っていないので、他県との違いがよく分かるのですが、岐阜は恵まれた土地でありながら、恵まれていないと思い込んでいる方が多いと思います。例えば、港も飛行場もないと言われますが、SNS、インターネットの時代に何かいかせることがあるはずです。

-- 岐阜県の良さはどんなところにあると思われますか。

野田議員 これほど複数の他県と接している県はなかなかありません。しかも、地理的に東西南北の真ん中にあり、あらゆる文化が入り込んでくる県です。岐阜県は広いので、北陸圏と隣接する飛騨地方と関西圏に隣接する西濃でも文化は異なり、まるで日本の縮図のようです。それに気がついて、楽しんで、多様な何かを見出して欲しいと思います。

例えば、知事が積極的に売り出してる関ヶ原は名だたる合戦上で、日本の大変な時代の中で東西がぶつかり合ったところ。その時から東西の文化が分かれていったというエピソードを県会議員の時に聞いたことがあります。そんなところはなかなかありません。世界中から来る観光客に古戦場を回る旅など、深い観光、専門的な観光を勧めるのもいいでしょう。「ゲティスバーグ」と「ワーテルロー」と「関ヶ原」が世界三大古戦場であると、どんどん発信していくべきです。岐阜県の方は真面目で謙虚な方が多いのですが、もっと積極的になってもいいと思います。

-- 岐阜県の発展について、考えていらっしゃることはありますか。

野田議員 国内の経済の豊かさには3つの要素があると言われていて、4割が企業の投資と道路事業などの公共投資、6割が個人消費です。 人口12千万人いる時代でしたら個人消費は伸びますが、人口減少をしている今、県内にいる人だけで経済を担う発想は早く捨てた方がいいと思います。地の利をいかして他県を吸収するとか、他県の経済を個人消費に取り込むとか、範囲を海外にまで広げることも考えた方が良いでしょう。

先ほども言いましたが、関ヶ原のような古戦場は東京にはありません。岐阜県だけにしかない特徴、岐阜に行かなければ得られない観光を磨き、他県の人にも海外の人にも喜んでもらうことで、岐阜県が潤うという発想に転換するのです。旅行で楽しい思い出を作ったり、行って良かったと思ったりすることは大事ではないでしょうか。すでに岐阜県はその素材をもっていて、埃をかぶっているだけ。岐阜の持ち味をいかせば、経済を伸ばせるはずです。

-- 観光産業の人手不足についてはいかがでしょうか。

野田議員 おもてなしをしてくださる方がいないと困るのですが、人手不足の時代は来ています。岐阜県は外国人に対して、共生の精神が他県よりも進んでおり、ご存知のように、美濃加茂市には日系ブラジル人が通う学校があります。文部科学省が認定してない学校に対しても、岐阜県はどこよりも先に独自の取り組みをしてきました。こうした経緯をいかして、旅館やレストランなどで、外国人との共生が必要になると思うのです。技能実習生や留学生への給料不払いなどの問題があったことを教訓とし、より良い待遇で、岐阜の宝を一緒に磨いてくれるような外国人との共生を目指すべきではないでしょうか。

--  観光以外にも大切にすべきものはありますか。

野田議員 41日にこども家庭庁が創設されました。子どもが真ん中になる時代への大きな節目になります。短期的な経済強化に観光産業への大きなシフトは必要になりますが、最終的には子育て支援につなげないといけません。岐阜市は中部地方で初めて、公立の不登校特例校となる「草潤中学校」を開校しましたし、いじめや虐待に対して、児童相談所と警察がタックを組んでいます。子どもや若者に対するあらゆる相談窓口となる「エールぎふ」もあります。これらを岐阜県下に轟かせていき、教育の岐阜、子どもが守られる岐阜として子どもたちが幸せになれる地方になるといいな、と思います。

-- そのほか、私たちが気づくべき岐阜県の取り組みがあれば教えてください。

野田議員 岐阜は治水にすごく力を入れています。昔、長良川は暴れ川と言われていたほど大洪水があり、堤防が切れたこともありました。今、堤防が切れていないのは運ではなく、人の命を守るために他県で類を見ない地道な治水事業を行ってきた結果です。また、国土交通省が道路整備をコツコツとやっていて、県内の道路交通網が随分、改善されています。県民を守るための政策を進めているところも、岐阜県のみなさんには気づいて欲しいと思います。

両親の影響で変わっていたと思われる子ども時代

--  子どもの頃はどのようなお子さんだったのでしょうか。

野田議員 私はいたって普通の子だと思っていたのですが、成績表で「このままではまともな人間にならない」と厳しい評価をされました。昭和ですから、先生の言うことを聞かなかったから、そう書かれたのではないでしょうか。おそらく、変わった子どもだったと思います。

-- ご両親はなんとおっしゃっていましたか?

野田議員 親は「勉強しろ」とは一切、言いませんでした。「お稽古事は自分で選んで、お小遣いの中でやりくりしろ」というのが父の方針でした。私の両親自体が変わっていましたね。あの父親、母親以上の変な人にはまだ会ったことがありません。だから私は小さい頃から自立していました。厳しい政治の世界にいてもメンタルが堪えなかったのは、両親のおかげかもしれません。

-- ご兄弟はいらっしゃるのでしょうか。

野田議員 妹と弟がいて、2人は変わってはいませんでした。要領がいいんでしょうね。私は両親の実験台みたいな感じで、妹は可愛いフリルのスカートを履いていましたが、私はパンタロン。男の子みたいでした。だから、教わらなくてもジェンダーレスだったと思います。高校は女子校だったので大工仕事もクッキー焼くことも学ぶ、マルチな教育を受けていました。

-- ジェンダーレスが当たり前だったのですね。

野田議員 女子校時代、初恋の相手は女子だったと思います。かっこいい先輩がいてチョコレートを渡すとか、女性が宝塚歌劇のみなさんに憧れるのも同じ。今、LGBTQの議論が起きていますが違和感はありません。その時々の尊敬や愛情によってジェンダーが変わってもおかしくありませんし、全ての人にありうることです。そんな子でした。

前の夫にも今の夫にも私と結婚した理由を聞くと面白いんですよ、「考えていることが10年から20年早いから」だそうです。だから世間に叩かれるのですが、我が家では当たり前。子どもの頃は多分、周りから見ると変わった子だったのでしょう。

--  10年、20年先のことを考えていらっしゃるのですね。

野田議員 今の政治の最大の欠点は、目の前の取り組みばかりになってしまうことだと思っています。私の職場は特に、子どものことに関しては大袈裟にその時は言うけれど、その後は子どもの存在を忘れてしまうようなところだったので、こども家庭庁を設立したかったのです。常に、この国の中心に子どもがいることを意識するためには、役所をつくらなければと思ったのです。子どもが幸せになるとそばにいる大人が楽になります。最初は母親であったり、父親であったり。おじいさん、おばあさん、家族や親族、大人を幸せにするのです。

興味があるのは、人間味あふれる真実の本

--  お好きな本や、今読んでいる本があれば教えてください。

野田議員 岐阜県が出てくる本でいうと、昨年の夏に『ロッキード』(著:真山仁)を読みました。ロッキード事件の背景に岐阜県の航空機製造業の話が出てくるので、興味深く読ませていただきました。

また、私は女性の作家さん、特に山本文緒さんが好きです。膵臓がんで亡くなる直前まで書かれていた日記『無人島のふたり』に心を打たれました。がんを患っている方々の辛さというものはなかなか伝わらないこともありますが、私はこの本で人間の弱さと美しさ、弱いから美しい、ということを教えてもらいました。私は仕事柄、がん患者さんと関わっていますが「頑張ってる」ではなく、「頑張れない」を言う勇気、へこたれたことを書き残す勇気はすごく大事だと思いました。病気であってもなくても、みなさんに読んでもらいたい本です。

もう1つ、変だと思われるかもしれませんが、今は山田風太郎さんの『人間臨終図鑑』を読んでいます。年齢順に有名人の死にざまが書かれている本で、例えば、コケにされて亡くなったとか、最後まで貧乏で死んだとか、当たり前なのですが人の死は本当にさまざまあると感じました。死の議論はタブー視されていますが、今、多死社会になっているからこそ、死にスタートラインを置かないとダメなのではないかと思うのです。嫌な話ですが、事実や科学としてきちんと受け止めたいと思いながら読んでいます。

-- 読書の時間はつくられているのでしょうか。

野田議員 必死で読んでいます。本は常に持ち歩いていて、新幹線の行き帰りでネットがつながらないような時に本を読んでいます。今は忙しいのと、空いた時間は子どもとの時間にしているので、以前に比べてあまり読まなくなりました。忙しくて体もしんどいから、あっという間に寝てしまいますし、くよくよする時間はありません。悪口言われたとか叩かれたとかで人は悩むじゃないですか。ネットへの書き込みもありますが、そういったものは見る時間がないんですよ。私の悪口を書いてくれていても読めなくてごめんね、と思っています。

「変だ」と思われることを大事にして欲しい
その変なことは10年、20年先の当たり前になっているから

--  岐阜県民のみなさんへメッセージをいただけますか。

野田議員 岐阜市のサンビル(サンデービルヂングマーケット)などのマルシェやイベントが他県から注目されていますが、女性や外から来た方、野球で言うとベンチに座ってた方たちを表に出すことで、違う景色が見えてくると思います。今まで岐阜県を担ってきた方たちがこのような方達と握手をすることで、当たり前すぎて見えていなかった岐阜県のポテンシャルを引っ張り出してもらうことができるのではないでしょうか。

--  若い方たちに伝えたいことはありますか。

野田議員 私の経験で申し上げるなら、「今、変だと言われることは20年後の当たり前になる」ということです。自分が40歳になった時に損をしないように今から変なことを仕込んで、時間をかけてでも諦めずにやって欲しいと思います。

私も諦めませんでした。こども家庭庁を設立するのに20年かかりましたから。当時は票にもお金にもならないから「奇妙な人」扱いでしたよ。やっぱり女性はこの程度だな、と言われていました。だから支援者さんも困っていたと思います。そして今度、郵便局が先祖帰りで、全国の郵便局が地方自治体の行政サービスを担うように法律改正をします。郵便局はどんな山奥であっても民家から大体1.2キロ以内に設置することが法律で決められているので、遠い役場まで行かなくても遠郵便局のキオスク端末でさまざまな手続きができるようにする、というのが25年前の郵政大臣の時の約束でした。

自分もそうでしたが、若い人は基本的に変なことを考えます。「変だ」と言われることをどんどん考えて、自分の幸せにつなげて欲しいと思います。

-- 上の世代が若い方を見守る必要がありますね。

野田議員 今、ダイヤル式の電話機がスマホに代わっているように、私たちの頭の中には使えなくなっているものがたくさんあります。若い方たちの変な考えは受け入れなくてもいいから、潰す必要はないかなと思います。

例えば結婚の話。結婚の入口として、昭和の時代には仲人さんや紹介所がありました。今、最も成功率と持続率が高いのはマッチングアプリなんですよ。私たちの時代だといやらしいものというイメージがあって、「えっ?、それは変だ」と思うかもしれません。けれども、マッチングアプリは正直ベースで出会うので、結婚後のギャップも少ないから成功率と持続率が高くなるのです。私たちの世代はロマンがないとか言って認めたくないんですよね。でも、もうそういう時代ではないのです。

-- 野田議員は若者を応援する側になられたということでしょうか。

野田議員 そうですよ、私なんか2回も結婚しましたし、子どもも生まれてもうこれ以上自分に贅沢を望んではいけないと思っています。県会議員の頃はかわいかったんですよ(笑)。だから、岐阜には「聖子ちゃん、聖子ちゃん」と呼んで自分の娘や妹のように心配してくださる方がたくさんいます。岐阜はいいところですよ。でも、そこに至るまで簡単ではありませんでした。誠実な県民性だから手八丁口八丁ではだめ。苦しい経験をして逃げなかったから、みなさんから100パーセント信頼していただけるようになりました。人としての「当たり前」を岐阜県のみなさんから教わりました。ありがたいことです。