INTERVIEW
Leader's Voice
社会や経済の変化を見極め、世界を見ながら仕事の価値を高めて欲しい
Interview
杉本 潤 会頭
美濃工業株式会社 代表取締役社長
代表取締役
代表取締役
代表取締役社長
経済、企業経営が変化を始めているからこそ、世界を見て欲しい
―― 今の経済動向を杉本会頭はどのように感じているでしょうか。
杉本会頭 近頃、取引適正化が浸透し始めていますが、自動車工業会は以前から取り組んでいました。自動車製造は日本の基幹産業です。中小、零細、小規模企業が血を出すような思いをして物を作っているところに経済産業省が手を入れ、ようやく15年かかって浸透し始めた印象です。これにより、ものづくり文化や経営方法が変わってきたと感じています。合わせて、ベースアップの風が吹き始めてもいます。中津川商工会議所では補助金や助成金の相談に対応しますので、ぜひ、価値ある仕事をして欲しいと思います。
―― コロナも影響していると思われますか。
杉本会頭 コロナによって随分、働き方が変わりました。出社しなくてもよかったり、フレックスタイムで出社したり、弊社もフレックスを導入しています。日本の働き方改革が大きく動き始めた実感があります。サービス業は大変ですが、例えば、ホテルではカウンターに立つスタッフが少なくなっているように、工夫されているところもあります。 また、今までの日本の固定観念が変わってきているようです。日本は「グローバルに」と言いながら、グローバル化できていません。島国のためしょうがないのですが、日本の常識は世界の非常識であることが多いと感じます。例えば、日本は価値ではなく時間に対して給料を払いますが、海外では価値に対して給料を払います。「1個作っていくら」という給料体制です。日本では残業のために「36協定」を結ぶことになりましたが、海外ではありえません。海外の方は働きたいだけ働きたいと思っていますから。そして、契約の際に、海外ではエビデンスやガバナンスを気にされます。 これは笑い話ですが、台湾の方と話していて、電話で「久しぶりですね、たまには会いたいですね」というと、日本では「そのうち行くよ」で終わりますが、台湾では「じゃあ、いつ会う?」と日程まで決めてしまうという、それくらいの考え方の違いがあります。 今は世界の情報がどんどん入ってくる時代です。日本の教育も政治も全てが国際ルールではないことが多いと感じています。
―― 中津川商工会議所さんのグローバル化はいかがでしょうか。
杉本会頭 中津川には、海外でビジネスをしている会社が12社あるので、海外の情報は面白いように入ってきます。そして、中津川商工会議所では3年に1回のペースで海外視察をしており、今年はイタリアへ行きます。飛行機は20席以上のビジネスクラスを予約するのですが、旅行会社さんは「商工会議所では聞いたことがない」と驚かれます。でも、会社の役員をしていれば、それぐらいは当たり前ではないでしょうか。もちろん、安い方が良いのですが、安全性の考慮やいろいろな経験をするためには、そのような空気感を知っていないと世界と向き合えません。私は先輩に「一流を知らずに、物を語るな」と教えてもらいました。一流の物、事、人は高い経験値をもっています。そういうところに入らないとできないことがたくさんあるからです。
リニアをきっかけに産業を取り入れるなど、観光の選択肢を増やすことができる
―― 中津川市はリニア新幹線への期待も高まりますね。
杉本会頭 残念ながら当初の予定だった2027年の開業は延期になりましたが、大事なことは目標をはっきりさせることだと思います。ある意味国家プロジェクトですから、情報を共有しながら目標に向かって1日でも早く完成度の高いものができることを期待しています。開業は先ですが、中津川と橋本には車両基地や整備工場が開業前に造られます。そのため、まちづくりのスピードは落とさず、開業予定だった2027年にターゲットをあてたまま進めていけば良いと思います。すでに、いろんな業者さんが中津川に調査に入っているようですし、少しずつ動き始めていることを感じます。
―― コロナ後のイベントの開催はいかがでしょうか。
杉本会頭 コロナから解放されてイベントも動き出しています。元に戻す以上に、進化したイベントを開催して活性化に繋げて欲しいと思います。ただ、コロナ禍で止まっていたイベントや祭りの継承が難しくなっている部分があります。100年以上前から続くお祭り「ギオンバ」では、中学3年生が大将になって子どもたちが提灯の飾り付けや町内の練り歩きをしますが、3年間止まっていました。大将として中学生は一生懸命に活動をして、文化をつないできたのですが、伝承しにくくなっているようです。3年は大きいですね。
―― 文化もそうですが、中津川が産業の歴史も長いですよね。
杉本会頭 中津川の産業の歴史を辿ると、最初は繊維、次に紙、渋沢栄一が中津川市の製紙会社の設立に大きく関わっています。そして、電気がきて工業が発展して自動車があり、これからはリニアで産業の歴史はまだまだ続いていきます。ロマンがありますよね。まちづくりに対するリニアの影響は大きく、受け皿になれるよう、私は東美濃全体で考えていきましょうと提案をしています。多治見は都市機能のまち、土岐市はショッピングのまち、恵那市は観光のまちといったように、地域によって色分けをしながら取り組むのが良いのではないでしょうか。 また、豊田市まで道を1本作れば産業観光ができます。例えば、中部国際空港に到着したら豊田の産業を見学して、中津川でリニアを見て、小牧や各務原では飛行機の見学ができます。そのまま下呂や奥飛騨で温泉入ってもいいですし、岐阜県駅から名古屋まで10分ほどのリニア体験もできます。中津川には駐車場があるので、ここから東京へ行くこともできます。観光は郷土に合った文化、歴史、伝統、産業、を取り入れて選択肢を作り、お客様が選んでくれればいいのです。中津川は工業のほかに、観光していただけるネタもたくさんあります。最新の情報としては、2箇所しか残っていない渋沢栄一の書が東京ともう一つ、恵那神社にあると聞きました。恵那神社は由緒ある神社ですから、ぜひPRできればと思います。
―― さまざまなジャンルをいかしていくチャンスがありますね。
杉本会頭 せっかくあるネタ、情報をいかさなければいけません。中津川には中山道が通り、3つの宿場町がありました。昔から各地の情報が集まりやすい場所なのです。今ではJR中央線、国道19号、中央自動車道も中津川を通っています。交通の要所として人が各地から集まり、情報も集まってきた場所。いろんな人とのふれあいによって感性が養われてきた土地なのです。この伝統を残していきたいと思います。
―― 若者へのメッセージをいただけますでしょうか。
杉本会頭 メディアが豊富にあり、いろんな情報が入り過ぎることで私も消化できないほどですが、自分なりの感性をもち、いろんな情報を自分のものにしてください。世界は広がっていますし、変化のスピードも早くなっています。特に、大きな変化をしている今、何が変化しているのか感じてください。聞いたこと、見たことを腹落ちして、「自分だったら」と、自分の言葉で相手に伝えることが大切です。そのためには、与えられた時間、お金、環境などをいかしてどんどん大きくして、自分の言葉で伝えてください。言葉はものすごく大事です。人を変えます。人に感動を与える言葉もあります。私は上から下へ自分の言葉で伝える「めいかいえん(命令・解説・援助)」を大事にしています。 また、学生までの仲間社会とは異なり、社会に出て組織の中で動くことになると、自覚と責任、そして、信頼関係を作ることが大切になります。信頼関係を築くためには、自分の得意をもつことです。そうすると、人から頼まれる。人に頼まれるというということは信頼されていることにつながるからです。
中津川商工会議所
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