考え方を変える、自己成長をする、幸せのためにできることがある

大垣商工会議所会頭
田口義隆さん
(セイノーホールディングス株式会社 代表取締役社長)

情報発信力強化
フェイスブックのフォロー数は日本トップクラス

-- 今の大垣商工会議所さんの取り組みについて教えてください。

田口会頭 私がもっている民間の手法は大きく2種類あり、因数分解することと仮説検証することです。民間は投資効果を考えてさまざまなプランを立てますが、そのために物事を分解して原因を探すことが必要になります。この手法を商工会議所の職員に伝え、企画を立てていただいています。最初は大変だったと思いますが、しっかりフォローしてくださり、大変、助かっています。

商工会議所の取り組みの一つとして情報発信力を強化しており、特にフェイスブックでの情報発信に力を入れています。職員が積極的に発信してくれたおかげで、日本にある515商工会議所のうち、11番目にフォロワーが多い会議所となりました。日本の十指に入るようになり、職員に感謝しています。これからはアジアナンバーワンという高い目標をもちながらみんなでチャレンジしていきます。

-- 情報発信力強化のほかに、DX推進化に取り組まれているとお聞きしました。また、商工会議所さんでアフターコロナに向けた取り組みもされていると思います。現在の会員さんや地域の動きで感じることがありましたら、教えてください。

田口会頭 コロナによってデジタル化が加速したように、日々社会が急速に変化しています。社会の変化に順応しつつ、柔軟な発想でチャレンジしていくことで、地域の発展につながると思います。大垣商工会議所では「SMILE SUPPORT-いつでも笑顔溢れる街 大垣を目指して-」をスローガンに掲げ、事業所において、事業効率化をはじめ、経営力の強化のために有力なDX化への対応を支援してまいります。

ワンストップ経営相談会でオンライン相談

オンラインとリアル、状況に応じて使い分ける

-- オンライン会議やオンライン相談についてはいかがでしょうか。

田口会頭 コロナ禍での会議はほぼオンラインでした。会員の方との相談もオンラインが増えています。人に会えない状況でも、顔を見ての会話や会議ができる方法として、ポジティブな思考をもって行っています。ただ、オンラインではやりにくいこと、分からないことが6項目あるのも事実です。

1つ目は「必然たる偶然」です。リアルな現場でないと起こらない現象です。2つ目は「パーソナリティ」です。オンライン画面以外の部分ではどのような格好をしているのか、どんな態度でいるのかは分かりません。その方の人となりや個性はオンラインでは分かりずらいでしょう。3つ目は「ネットワーク」、人と人とのつながりです。誰と誰が親しいのかは、リアルな現場でないと見えてきません。

4つ目は「インスピレーション」です。空気や雰囲気で感じる気づきのことです。5つ目は「相手の力量」です。例えば、キャッチボールをした時、100の力で投げても相手がそれを受けてくれるかどうかは分かりません。リアルな会議であれば、相手の雰囲気を見ながら、この人は30の力で受けられるかな?次は50で受けてもらえるかな?と感じることができます。いきなり100で投げてしまうと避けられてしまうので、進む話もきっと、進まなくなってしまうでしょう。

そして、最後の6つ目は「外堀を埋めること」です。何かお願いをしたい時、リアルな現場では「実はこの案件をあの人にお願いしたいんだけど、どう思う?」と聞くことができます。日本の企業体の場合、さまざまな案件は下から積み上げて外堀を埋めてから話を進めていきます。相手も「こういう話が来ますよ」と耳にしているので、構えることができます。

-- リアルが必要な場面も多くありますね。

田口会頭 難易度が高い案件はリアルでないと進まないこともあります。会議では自分以外の方が何を考えているのか、その場の雰囲気を吸収しながら進めていきます。

商工会議所の職員も会員さんの悩みを把握するために足を運んで訪問することがありますが、オンラインとは質の異なる情報を得ることができています。昨年、岐阜県人会インターナショナルの世界大会が岐阜県で行われましたが、世界中の岐阜県人が岐阜に集まる、ということに意味があると思います。オンラインとリアル、状況に合わせて行動することが必要な時代になったのです。

趣味の茶道、トライアスロンから多くを学ぶ

-- 最近、興味があることを教えてください。

田口会頭 たくさんあって語り尽くせないのですが、ここ一年ほど、お濃茶を点てる(練る)ことを毎朝の習慣にしています。千利休は腰の差物を抜いて狭い空間に入っていく茶室を、他とは異なる空間としています。入り口が低い理由は、頭を下げて空間に敬意を払うため。茶室では客人が家主となり、サーブする側は「ようこそいらっしゃいました」という気持ちで迎えます。お茶一つとってもさまざまなしつらえや作法があり、それぞれにきちんとした意味があります。ビジネスの世界も、会員さんの取り組みも、必ず意味があることを私たちは理解しないといけないことを朝の濃茶で学んでいます。

-- 忙しい朝に心を落ち着けることができますね。

田口会頭 お湯を入れて道具を仕舞うまで10分ほどです。動きはゆっくりですが、とんでもなく早く点てています。茶器などの道具も雑に扱わず、残心で動いています。早くても丁寧な仕事があるのと同じです。

-- ご趣味のトライアスロンはいかがでしょうか。

田口会頭 2022年は7レースほど出ることができました。コロナ以前とは競技方法が変わってきており、密集した状態での一斉スタートではなく、5人ほどが5秒ずつずれてスタートし、チップでの計測を行います。また、3種目あるところを2種目にして競技人口の裾野を広げていく方法もとられています。マラソン大会もゴールの場所とゲートの開き時間だけ決めておき、参加者が好きな場所からスタートするなど、コロナ禍でもできる方法で開催されています。

どんなことでもどんな環境でも、実行するためにはどうしたらいいのだろうと考えれば、やれないことはないのです。考え方次第で、挑戦はできます。

見方を変えてポジティブに
自己成長し、他者へ貢献することで幸せになる

-- 田口会頭は仕事や商工会議所の活動などを進めるにあたり、どのような考えをおもちでしょうか。

田口会頭 乱暴な言い方をすると、「物」や「事実」に意味はありません。例えば、コップに水が半分入っている時、半分入っているという事実には意味がないのです。「半分しかない」と意味付ける人と、「半分もある」と意味付ける人、物事に意味付けをするのは人間です。半分しかない水を見て、厳しいなと思うか、反対に、これで恵まれた、と思うのか、意味の付け方で天国と地獄に分かれます。

松下幸之助翁も同じようなことをおっしゃっています。幸之助翁はさまざまな哲学書を書いていますが、基本的な考え方の一つに「全肯定大努力」という言葉があります。幸之助翁の元秘書で元PHP研究所社長の江口克彦さんは大成功をした幸之助翁に「なぜ成功したのか」と聞いています。幸之助翁は3つあるとおっしゃったそうです。「私は体が弱くて、貧乏で学がなかったからだ」と。だから、人に任せることができて、他の人から学ぶことができて、お金の大切さが分かったのだそうです。だから、「物」や「事実」には意味がないのです。

-- 若い方にメッセージをいただけますか。

田口会頭 大垣商工会議所では「SMILE SUPPORT」をスローガンに、さまざまなところにリンクを貼りながら、横と縦を繋ぎ、時代も繋いでいきます。リンクを貼る最初のきっかけとなる取り組みとして、最初に申したように、商工会議所では情報発信をしているのです。リンクを貼れば貼るほど、物の見方が変わり、たくさんの知恵がつきます。若い方達はすでに自らさまざまなところにリンクを貼って、知恵を得ていると思います。それはとても重要な行動だと思います。

それではなぜ、リンクを貼って知恵をもらっているのかというと、幸せになるためです。幸せとは、痛みを避けることと、自分の欲しいものを得ることの二つがあります。自分が成長をすればするほど、他人に貢献できる範囲が広がります。そうすると、周りから攻撃されることも少なくなり、痛みも少なくなります。痛みを避けて自己効力感をもてば、人の役に立っていることを感じることができ、幸せホルモンと呼ばれているセロトニンが出てくるでしょう。自己成長をして他者に貢献することが、幸せの根幹につながってくるはずです。

若い方達もいろいろなところとつながり、自己成長をし、他人に貢献するためにさらに成長して欲しいと思います。企業も「経世済民」です。世の中を治め、民を救うために行動して欲しいと思います。大垣商工会議所はまとめ役として、みなさんの発展をサポートしていきたいと思います。

■大垣商工会議所
岐阜県大垣市小野4丁目35-10
TEL.0584-78-9111 FAX.0584-78-9112