豊かな発想で、瑞浪ボーノポーク、バサラカーニバル、ゴルフ
瑞浪市ならではの特徴を伸ばしていく

瑞浪商工会議所会頭
鷲尾賢一郎さん
(瑞豊食品株式会社 代表取締役会長
みずなみアグリ株式会社 代表取締役社長)

東濃の中で、個性を出したまちづくりを展開

-- 東濃の中の瑞浪市はどのようなまちでしょうか。

鷲尾会頭 瑞浪市を含める東濃5市はどちらかというと愛知県、名古屋市に近く、岐阜県の中でも少し異なる経済圏をもっています。各市がそれぞれの役割があり、多治見市は名古屋からの玄関口、中津川市はリニア中央新幹線が開通すると東京からの玄関口になります。土岐市は大型ショッピングモール「イオンモール土岐(仮称)」がオープンすると商業のまちに、恵那市は昔からの伝統が残る、歴史のまちです。
では、瑞浪市には何があるのかというと、地理的には東美濃の中央に位置し、各市の特徴を持ち合わせられるようなまちに、強いて言えば、医療・文教のまち、高齢者に優しいまちになることを目指すと良いと考えています。今、リニアの開発が進んでいることで東美濃地域が脚光を浴びています。今後10年で大きく変わっていく地域になるのではないでしょうか。東濃5市が一つにまとまり、地域全体でまちづくりを進めていくのが良いのではと思います。

-- 瑞浪市の特徴を詳しく教えてください。

鷲尾会頭 主に4つの特徴があります。1つは陶磁器、2つ目は中山道を中心にした歴史と、もっと古い歴史を掘ると化石のまちということ。3つ目は私が最近、売り込んでいこうとしているゴルフのまちということです。市内に13のゴルフ場があり、ゴルフ場の多い市として、全国的にもベスト5に入るのではないでしょうか。そして最後の4つ目が、これも売り出し中の「瑞浪ボーノポーク」です。

-- 「瑞浪ボーノポーク」とはどのようなものでしょうか。

鷲尾会頭 岐阜県が開発した新しい豚の品種で、肉質を追求しながら瑞浪市の農場で育んでいる豚肉です。「瑞浪ボーノポーク」は地元の農産物直売所の「きなぁた瑞浪」で販売しています。「きなぁた瑞浪」は商工会議所の会頭と兼任して、私が社長を務めるみずなみアグリ株式会社が運営しており、発起人は瑞浪市・JA陶都・瑞浪商工会議所で、オープンしてから今年でちょうど10年目を迎えます。オープン当初、何か特徴のあるものをと商品化したのが「瑞浪ボーノポーク」です。店内でカットした精肉を販売しているほか、一昨年に開設したボーノポークハム工房でハム、ソーセージ、ウインナー、ベーコンといった加工品を製造・販売しています。
2023年には「きなぁた瑞浪」の10周年を記念する、バーベキュー場のオープンを予定しており、市民みなさんにボーノポークやソーセージなどを食べていただける施設になります。

ボーノポーク

きなぁた瑞浪

新鮮な地元食材が購入できる「きなぁた瑞浪」

若者のバサラ踊りで盛り上がる瑞浪市

-- 瑞浪市では、どのようなイベントを開催していますか。

鷲尾会頭 瑞浪商工会議所の最も大きな事業が「瑞浪美濃源氏七夕まつり」です。毎年、8月に3日間かけて開催しています。新型コロナ感染症の拡大により、ここ2年、中止になっていますが、各地域の夏まつりの集大成として、瑞浪市のシンボルとなっています。内容は七夕の飾り、祈願花火、バサラ踊り、24時間以内に陶土でオブジェを制作する「クレイオブジェコンテスト」の4本柱で開催しています。

瑞浪美濃源氏七夕まつり

「瑞浪美濃源氏七夕まつり」の様子

「瑞浪美濃源氏七夕まつり」でバサラ踊り

「瑞浪美濃源氏七夕まつり」では
祈願花火も打ち上がる

-- 12月に開催されている、バサラカーニバルについても教えてください。

鷲尾会頭 JR瑞浪駅前がメイン会場になる「瑞浪バサラカーニバル」は、約1万人の若者が全国から集まり、思い思いの衣装でバサラを踊るフェスティバルです。東海圏はもちろん、関西、遠くは北海道からたくさんのチームが来てくださり、「瑞浪にこんなに若者がおったのか」というくらい大盛況です。

-- なぜ「バサラ」なのでしょうか。

鷲尾会頭 土岐一族の「何者も恐れず自由大らかに振る舞うバサラの心意気」という武士の考えを尊重するためです。バサラカーニバルは2019年に第20回目を開催し、瑞浪市のひとつの伝統文化になりつつあります。

バサラカーニバル

個性豊かなチームが参加する「バサラカーニバル」

ゴルフ場、ゴルフ大会で盛り上がる瑞浪市

-- 「ゴルフの町みずなみ」についてはいかがでしょうか。

鷲尾会頭 ほどよい丘陵地帯が広がり、名古屋から近いことから、瑞浪市にはゴルフ場が点在しています。瑞浪商工会議所が主となって企画・運営し、市内の企業さんにスポンサーになっていただく「ゴルフの町みずなみ オープンゴルフ大会」があります。市内にある13の各ゴルフ場で予選を行い、各ゴルフ場の上位プレーヤーが決勝を行います。決勝大会は毎年、ゴルフ場を変えて行い、大会の日程も冬や夏、いろいろ変えながら開催し、さまざまなゴルフ場をさまざまな季節で楽しんでいただける大会です。瑞浪市をあげて開催していますが、市外からの参加者も増え、また、ホールインワン、エージシュートされる方も多く、とても盛り上がる大会です。

-- ほかにもゴルフ大会が盛んですね。

鷲尾会頭 「ゴルフ5カントリーみずなみコース」でアルペンさんのゴルフ大会が開催されています。商工会議所からは優勝者の記念品として「瑞浪ボーノポーク」を提供しています。

ゴルフ場が多数ある瑞浪市

ゴルフの町みずなみ オープンゴルフ大会

いままでにない視点で起業、自ら資格取得の努力も

-- プライベートで熱心に取り組んでいることはありますか。

鷲尾会頭 栗の生産、出荷をしています。10年ほど前、岐阜県中津川市の試験場で講習を5週間ほど受け、油圧ショベルの中古を購入して畑に穴を掘り、苗木を植えました。現在は200〜300本の栗の木がありいろいろな品種を生産し、シーズンになると「きなぁた瑞浪」へ出荷しています。瑞浪は気候風土が栗の生産に合い、栗の生産地ということもあり、挑戦してみました。周囲には内緒で始めたのですが、ある時、テレビの取材を受けたことで東京にいる弟をはじめ、たくさんの人に見つかってしまって。「一体、何を始めたの?!」「鷲尾は今度は何を始めたのか?」と電話で心配をされました。
ですが、「きなぁた瑞浪」へ出荷をしていると、ほかの出荷者の皆さんとコミュニケーションがとれることが嬉しくて。栗の新しい品種「ぽろたん」を出荷していますが、消費者さんから「鷲尾さんのぽろたんが欲しい」とまで言っていただけるようになりました。反対に、いい加減なものを出荷してしまうとお叱りを受けます。直に反応が分かるのはありがたいことです。

-- 内緒で始められたとは、興味深いですね。

鷲尾会頭 私が代表取締役会長を務める瑞豊食品株式会社はカップラーメンなどに使われるスープを製造しているのですが、鶏ガラや豚の骨、野菜クズなどの処理が課題になっていました。そこで、乾燥させて肥料にしたらどうかと考えたのです。そこで、試しに栗の圃場に肥料を入れたらどうなのか、というテストも兼ねた栗の栽培だったのです。

-- 研究目的もあったのですね。

鷲尾会頭 今では、会社から出たガラやクズは全て肥料にして、配合肥料の原料として肥料製造業さんに引き取ってもらえるようになりました。知り合いには冗談で「鷲尾さんのところは鶏ガラとか豚の骨とか骨の髄までしゃぶって、残ったものもまた乾燥させて売っている」と言われたことがあります。でも違うんですよ、地球環境を持続するために行っているのです。弊社を立ち上げるまで、食肉処理場や精肉店では鶏ガラなどの処分に困ってみえたようで、会社を立ち上げた当初は岐阜市の方面まで私がトラックを運転して、集めて戻り、スープを製造していました。ちょうど、インスタントラーメンが出始めた頃で、スープ作りの教えをいただき、起業することになったのです。

-- 起業当初から持続可能な社会の仕組みづくりに携わられているのですね。

鷲尾会頭 東京2020オリンピック・パラリンピックのメダルはスマホやPCなどの小型家電から集めた金・銀・銅から作られているそうですが、今なら、都市鉱山から金属を集める仕事をしたら面白いのでは、と思います。また、私はこれからは自動車の蓄電池など、電池関係の事業を進めると、これからの社会に貢献できるのではと思っています。

-- 起業当初は苦労されましたか。

鷲尾会頭 何かの折に「わがB級人生」と話したことがあります。学生時代は普通自動車免許はもちろん、大型自動車免許を取得して、トラックドライバーのバイトをしました。また、仕事を始めるにあたり、ボイラー技師の2級と1級、公害防止管理者の大気関係と水質関係の資格、危険物取扱者など、あらゆる資格を取得しました。というのも、人を雇用する余裕がなかったため、自分で取得するしかなかったのです。正直、学生時代より勉強をしたのではないでしょうか。
ボイラー技師講習の先生が安八に住まわれている方で、安八豪雨の水害(1976年)で講習会が休講になったこともありましたが、なんとか合格できた思い出があります。たくさんの人とのご縁があり、助けられながら会社を続けて来られたのだと、今、思い返しています。渦巻き理論ではないですが、人とのつながりがあってこそ、発展できたのだと感じます。

-- もともと食品や環境について学ばれたのでしょうか。

鷲尾会頭 大学は早稲田大学の経済学部でした。卒業後は資生堂に勤めましたが、5年ほど経ってから、インスタントラーメンのスープ製造の話があり、妻の出身地の瑞浪で原料を集められるのではないか、ということで瑞浪で起業しました。私は兵庫県神戸市の出身ですが、瑞浪は他所から来た人も受け入れてくれる懐の広い土壌です。商工会議所の会員にもなり、まさかこのような形で会頭までやるようになるとは思いませんでした。これで4期目となり、瑞浪に感謝しています。

時間のあるうちに失敗を恐れず、取り組んで欲しい

-- 人生経験豊富な鷲尾会頭から、若い方へメッセージをいただけますか。

鷲尾会頭 私は後期高齢者になってしまいましたが、若い方にはまだ時間があります。失敗を恐れずにいろいろなことに取り組んで欲しいと思います。失敗してもやり直す時間があること、また、失敗してもそれが良い励みになるのは若さゆえの大きな特権です。
ただし、聞く耳を持って欲しいと思います。裸の王様にならないよう、人の意見をたくさん聞き、最終的な判断は自分で決め、進んで欲しいと思います。

■瑞浪商工会議所
〒509-6121 岐阜県瑞浪市寺河戸町1043-2
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FAX.0572-67-2230