INTERVIEW
Leader's Voice
町民自らが楽しめる環境づくりを進めることで近隣市町から人を呼び込み、観光へつながる
Interview
竹中 誉 町長
程よく自然を残しながらインフラが整った、バランスの取れたまち
―― 池田町の強みについて教えてください。
竹中町長 立地的には名古屋圏に向けて程よい距離にあって、容易にアクセスできるところにありながらも程よく自然が残っていて、調和がとれていると思います。インフラ設備についても上下水道が完備していて、バランスの取れたまちだと思っています。
―― 逆に課題についても教えてください。
竹中町長 今話したことは強みであると同時に、デメリットな部分もあると思います。端的に言えば中途半端かもしれません。本当に自然を楽しみたい人は、もっと奥へ行きますし、自然を楽しみに来る場所が、必ずしも当町である必要はないのかもしれません。
今は町外から訪れるという視点で話しましたが、住むという視点でいえば、インフラも整っていますし、程よく自然が残りながら、岐阜市、名古屋市へも容易にアクセスできますので、住むということに関しては、よい条件が整っていると思います。
「池田山」「霞間ヶ渓」「大津谷」をつなげて
人の流れ作り出す仕掛けを考えたい
―― 観光面に関してはどのようにお考えですか?
竹中町長 これまでは外から多くの方に来ていただくという意味での観光でしたが、少し違う方向で目を向けていきたいと考えています。町民の方自らが楽しめるような環境を進めることによって、結果的に近隣市町からも人が来てくれるという作り方をしていきたいと思っています。
極端な例ですが、京都などにインバウンドによる観光客が押し寄せている状況の中で、そこに住んでいる人の中には迷惑だと思っている人もいると思います。当然、当町に人が押し寄せる状況は想定できませんが、町外から来ていただける方に向けて作った山麓道路の山肌、キャンプ場、「霞間ヶ渓」などは今後もブラッシュアップしていきますが、それが町外向けであればあるほど、地元の町民はそっぽを向くかもしれません。そうなると人が来るから商売をしようという機運が高まる前に、「彼らが来るから私たちの住環境がゴミであふれる」と考えれば、町内で推進派と抑止派にわかれてしまいます。そのようにまちを分断する政策はよくないと思います。
今、町民がやってくれている一斉清掃、草刈りがあってこそ、現在の環境があると思います。今後、観光施設を拡充する場合、町民の協力がない状況であれば、すべて行政のお金を投下して環境を保持しなければなりません。それは財政的に無理な話です。この環境が自分たちの財産だという誇りを胸に持って自主的に参加してもらう。参加することによってコミュニケーションが高まって、イベントに出ていくことが楽しいと思ってもらえるようになることも期待していますので、まずは町民が使いやすいこと、それが町外に広がって、結果的に観光につながるのだと思っています。
―― 町民自らがこれまで以上に利用したり、楽しんだりできるようにする視点が大切だということですね。
竹中町長 はい。健康維持・促進も目的の一つになりますが、「池田山」の登山道や山麓道路への遊歩道など健康に資するリニューアルを進めていきたいと考えています。池田山は「単に山があるだけ」と言われるケースもありますが、ただある山から、皆さんに楽しんでいただける山にするという方向性で整備できたらと考えています。
気軽な気持ちで低い山に登る方は増えていると思います。そんな中で、池田山に登る町民に話を聞くと、「登山入り口から頂上までひたすら登るだけです。途中に見晴らしのいいところがない」と言います。途中に見晴らしのいい休憩所を作れば、人によっては、そこで折り返すこともできますし、ちょうどいい休憩ポイントになります。登山を楽しんでいる方の目線で見ると、まだまだ改善しないといけない部分はあると思います。
―― 「池田温泉」についても、町外というより町内目線でブラッシュアップするというお考えですか?
竹中町長 すでにたくさんの町民に利用してもらっていると思いますが、なんとかしたいという思いはあります。コロナが人の行動様式を大きく変えました。コロナが明けたからと言って、来館者数がコロナ前に戻る状況ではないです。コロナの間に、民間の施設が増えて比較的遅い時間まで営業しています。コロナ前までは池田温泉へ来ていた方が、他の民間施設へ流れた部分はあるととらえています。それをどう引き戻すかということについては、ようやく営業時間も22時までに戻りましたが、様々な視点で検討していく必要があると思います。 ただ、池田山があるエリア、霞間ヶ渓があるエリア、「大津谷」があるエリアが、イメージ的には単独で存在している感じです。この三つをつなげた、うまい見せ方、周遊的に人の流れを作り出す仕掛けを考えていきたいと思います。
―― 特産品については、どのように感じていますか?
竹中町長 本当はお茶を頑張りたいと思っています。先日もお茶組合の方と話す機会がありましたが、私のようにお茶をさほど好んで飲まない世代は、おいしいお茶の淹れ方を知らないです。私自身、何度も経験があるのですが、これまでに何度もおいしいお茶をいただく機会がありました。「すごくおいしいですね。これは、どこのお茶ですか」と聞くと「〇〇茶です」と教えてもらえますので、まったく同じお茶を買って家に帰ります。でも家で飲んでみると、全然おいしくないです。淹れ方が正しくないのです。淹れ方のキャンペーンも合わせて、お茶の販促をしていくことが大切ですし、同時に外に対してPRすることも必要ですが、まずは町民に向けて「池田町では、こんなにおいしいお茶が採れるんです」ということを伝える草の根的な活動を広めていきたいと思います。
池田山のすそ野の景観は、お茶という生産がなされているからこそ保たれているものです。本当にお茶が生業にならなくなって、景観のためだけにお金を投下していくことになると、行政としては莫大な費用をかけることになります。必然的に難しい話ですから、池田山のすそ野は草ぼうぼうになって、風光明媚だと言われた景観はなくなってしまいます。
お茶はもちろん、お米もそうですが、生業としてやってくれる生産者がいるおかげで、景観が保たれていることを私自身も自覚し、町民も改めて理解する必要があります。農業で食べていくことができる若い人を増やすために、農協とも連携しながら食べていくだけでなく儲けていくことができるスキームを考えていく必要があると思います。
ほかには、梅と味噌もいいものがあるようです。選挙期間中に、加工している方とお会いする機会があって、「竹中さん、あなたが当選したら、こちらにも目を向けてください。梅はすごいし、味噌もすごいですよ」と言われました。まだ、はっきりしたデータとして見ているわけではないですが、自分の目と舌でも確かめて、よいものであれば返礼品としても打ち出して当町を代表する特産品になってほしいと期待しています。埋もれたものに光を当てて、個人で売るだけではなく、今はふるさと納税というプラットホームがありますので、そこへ出品しながらシェアを高めるまでのサポートができたらと考えています。
オシャレなまちには人を引きつける魅力がある
―― 職員の資質については、どのように感じていますか?
竹中町長 極めて優秀な人が多いと思っています。私が思いつきのように「ああしたい」「こうしたい」といったことが数日の間に実現されていますし、実現に向けて「今こうなっています」という経過報告もしてくれます。
前町長の入札にまつわる不正問題がありました。ただ、情報を漏らさないようにするには、どれだけルールを作っても難しいと思います。先日、ある入札がありました。指名委員会が決定するもので、当然、私自身は入札に関わることはできませんが、町長が回覧する書類がありました。私は初めてですから、職員から「このように書いてください」と言われて書きましたが、「そもそも、この手続きは必要ないのではないですか」と伝えたらすぐになくなりました。
今回の問題に関して言えば、「町長が情報を入手できないようにしておけば、他人に漏らすことはできないです。落札が終わるまで、どこの会社が参加しているか知らなければ漏らすことはできないですから、そのようにできないですか」と職員に伝えたら、現状の中でできるだけ町長に情報が回らない、また入札で使用した資料はすべて回収して、口で話す以外は情報が流出しないよう、すぐに対応してくれました。
職員に対しては、初日に「自分が正しいと思うことをやりなさい」と伝えました。自分が正しいと思うことと、現状のルールが違っていたら相談に来てくださいと言いました。私の方からも、「これはこうしてほしい」という話はしますし、職員からも「この手続きはないほうがいいと思います」という提案も受けて、どんどん効率化を進めていきたいと思っています。
住民手続きのカウンターがあります。その下に、いろいろなポスターがびっしりと貼ってありました。「これ、住民の方は見ていますか?」と尋ねると「見ている方もいますが、ほぼ見ていないです」と答えが返ってきましたので、「見た感じ、汚いからはがしてください」と言って、すべて外してもらいました。情報が雑多にあふれていても伝わりません。伝えたいことだけ、しっかり周知したほうが伝わると思います。
―― 民間出身の新しい町長ということで、期待感も大きいと思います。選挙期間中はどのような声が聞かれましたか?
竹中町長 「長期政権の中での膿ができたから、そこは変えてほしい」という話は聞きました。当然、その思いに応えたい気持ちはありますが、それよりも自分が思う正しい行政、透明性のある行政、キレイで清潔感があって、皆さんがストレスなく足を運んでいただける環境にしたいと思います。
ひょっとしたら、これまで行政が価値を置いていなかったと思われるデザイン性も取り入れていきたいと考えています。前町長は芸術や文化、デザインにあまり価値を置いていなかったような気がします。伝えなければいけないという思いの中で雑多にポスターを貼って、全体のバランスがちぐはぐしていた部分があったのではないかと思います。
選挙期間中、私を支えてくれた方の中に、デザイン、アート系の仕事をしていた方がいました。その方からは、「デザイン的に洗練されているものは、人の心の中にすっと入っていく力があります。もしそれをわかってくれるなら、オシャレなまちにしてほしい。オシャレなまちは必ず伸びます」と言われました。私もその通りだと思いますので、デザイン的に洗練された空間づくりをできる範囲内で頑張っていきたいと思います。
当町で長く途絶えていた芸術、文化分野への働きかけもしていきたいし、イベントも増やしていきたいと考えています。承認欲求を抱える方は若い方のSNSだけでなく、お年寄りも含めてリアルの中にたくさんあります。自分が心血を注いで作り上げたものを誰かに見てほしいと思う方はたくさんいます。自分が造ったものを誰かに見てほしいという思いさえあれば、条件を設けることなく“池田町の美術展”のような形で実現できないかと考えています。
―― 町長さんは背が高くてスマートな印象ですが、何かスポーツをされているのですか?
竹中町長 背が高いゆえのスポーツはしてきませんでしたが、小学校は野球少年団、中学、高校は陸上部、大学時代は腰が痛くなって途中でやめましたが、ゴルフ部にいました。今は残念ながらスポーツなどはやっていなくて、体を動かすといえば草刈りぐらいです(苦笑)。ただ体調管理は大切ですから、意識的に何かスポーツをしないといけないと思っています。比較的容易に取り組めそうなのがウォーキングですから、趣味と実益を兼ねて町内を散策するのもいいかもしれないと考えています。
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池田町の情報
面積:38.79km2
人口:22,610(令和6年7月1日)
町の木:お茶
町の花:ヤマザクラ
名所・旧跡・観光
池田山
池田温泉
霞間ヶ渓(かまがたに)
大津谷公園
生活環境保全林「池田の森」
隣接する自治体
大垣市|揖斐川町|大野町| 神戸町|垂井町
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