観光に注目できる岐阜県。自分が生まれ育った地元も見直して欲しい

一般社団法人 岐阜県経済同友会
筆頭代表幹事 中川 正之 さん
(株式会社ハウテック 代表取締役社長)

観光業、製造業がこれからの岐阜県を盛り上げる

-- 岐阜県の県民性で感じることを教えてください。

中川代表幹事 弊社は大手住宅メーカーの製品を生産しており、下呂の本社以外に東京と大阪に営業所が、茨城と宮城と静岡に事業所があります。それぞれの社員の姿を見ていると、県民性があることがよく分かります。宮城と飛騨は気候が似ているためか同じような人柄を感じることができて、どちらも控えめで我慢強い。静岡は温暖な地域の雰囲気がありますし、茨城は都会の洗練された考え方で取り組む姿勢があります。弊社の社員だけの話かもしれませんが、地域によって県民性があることを感じており、それぞれの地域のカラーを大切にしています。

-- 岐阜の経済界の印象はいかがでしょうか。

中川代表幹事 県内には上場企業もありますが、全体としては中小企業が中心に動いている印象です。自動車関係、航空機関係、陶磁器のほか、飛騨では木工業や建材業が盛んです。もう一つ、「観光」も岐阜県の大きな産業だと思います。特に下呂、飛騨高山、白川郷といった飛騨地方は観光交流人口が年間500万人ほどいて、そのうち宿泊者が200万人。観光だけの人口でいうと、岐阜県全体の半分ほどが飛騨に集中しているのではないでしょうか。飛騨は国内だけでなく、世界的にもメジャーになりつつあります。

-- 観光にも期待ができますね。

中川代表幹事 ただ、雇用の確保が難しくなっている課題があります。コロナでお客さんが戻ってきたらフルサービスができなくなってしまった旅館さんもあり、岐阜県は全国でも1、2を争うぐらいの求人倍率が高い県となっています。

-- 今後、岐阜県はどのような県になっていくと思われますか。

中川代表幹事 私が製造業を経営しているということもありますが、愛知県と三重県と岐阜県の中部エリアはやはり、日本の製造業の中核をなすエリアだと思っていますし、これからも中心的な県になっていくだろうと考えています。また、労働力については多様な形で変化していくだろうと感じています。AIが中心になり、ロボットによる生産も近い将来には半分ほどになるだろうと言われています。私たちはそれらを使いこなす技術を身につけていく必要があるでしょう。

観光に関しては飛騨に力を入れていくのが良いのでは、と考えています。岐阜市は駅周辺にどんどんマンションやビルが建設されています。名古屋まで電車で20分で行けますから、ベッドタウンとして栄えるのもありかもしれません。私の希望としては、岐阜市内において長良川の堤防道路を渋滞が集中しないように整備したら、さらに人の流れが生まれるのではないかと思っています。

-- 県内の道路交通網がカギになりそうですね。

中川代表幹事 完成予定が延長しそうですが、リニア中央新幹線の駅が中津川にできると、間違いなく岐阜県の東の玄関口になりますし、インフラが整備されることで、交流人口、観光人口も変わってくるのではないでしょうか。岐阜県の存在感が出てくることに期待をしています。

勉強会を続けながら、岐阜県の将来を見据えた提言活動も

-- 岐阜県経済同友会の活動について教えてください。

中川代表幹事 岐阜県経済同友会は業種を超えた経営者が個人で参加する団体で、現在、360強の会員さんがいます。活動の中心は月に1回の例会です。著名な講師をお招きして、経営、経済、文化、政治に関する貴重なお話をお聞きする勉強の場となっています。さらに、観光振興に関する委員会と人材育成に関する委員会を設け、単年度で提言活動を行っています。提言は知事に施策の提案として届けています。

-- これまでにどのような提言をされましたか。

中川代表幹事 令和4年度、「岐阜県の観光振興を考える委員会」の委員長を株式会社インフォーファームの辻雅文さんにお願いしたところ、飛騨の観光にクローズアップしていただいた提言書にまとめていただきました。内容は2つありまして、下呂と高山間を結ぶ国道41号を観光ルートとして、安心・安全な道路整備をすると同時に、走って楽しくなるような道路整備をして欲しいという提言が一つ。もう一つは、中津川、下呂、郡上の80kmを地域高規格道路で結ぶ濃飛横断自動車道の話が35年ほど前からあり、そのうち8kmまで整備されていますがリニア駅のオープン日を目指して、少しでも 実現できるようにという提言です。

知事にお渡しする前に下呂市長と高山市長、中部地方整備局 高山国道事務所の所長にも提言書をお渡ししています。私たちの提言内容についてはご理解いただけました。飛騨の出身であり、岐阜県経済同友会の飛騨の代表幹事を務めていた私からすると、大変、ありがたいお話で、辻委員長には感謝しています。

もう1つ、宿泊税の提言をしました。賛否両論ありますが、全国ですでに導入している自治体もあります。市町村単位で税金を徴収できるので、非常に活用しやすいのではないかと考えています。令和5年度は6月からスタートしますが、同じように2つの委員会の立ち上げをお願いしています。

釣り、キャンプ、バーベキューなどのアウトドアが得意。今はゴルフで健康を維持。

-- 休日はどのように過ごされていますか。

中川代表幹事 何もない男ですよ(笑)。今年でちょうど70歳になります。可能なら週に1回、今は月に2回ほど週末に友人とゴルフを楽しむことが息抜きになっています。休日のゴルフ以外の時間は家族と食事をしたり、妻と買い物に出かけたりしています。妻と買い物に出かけると、週明けの出勤日に社員から「奥さんと一緒にスーパーマーケットにいましたよね。そんなことされるんですか」と声をかけられます。どうやら、私が家族と買い物をしている姿が不思議に感じられているようです。また、子どもが3人おり、長男家族とは2世帯で住んでいます。昨年、初孫が生まれて少し生活が変わってきたかな、という感覚はあります。

-- 社員さんから見ると、中川さんは社内と社外のイメージにギャップがあるようですね。

中川代表幹事 先入観で亭主関白のようなイメージがあるのかもしれませんが、決してそのようなことはなく、私は社員に怒ることは少ないと思います。よっぽどの間違いがあれば厳しく言いますが、社長がガミガミ重箱の隅つついたようなこと言っても、お互いにストレスが溜まるだけ。そもそも私は怒ることが得意ではありませんし、社員とはフランクに話がしたいなと思っています。会社は楽しい方が働く意欲が出ますよね。みなさんが一生懸命、働いてくれることが一番。社員の力で成り立ってるわけですから、自分では何もできない、つまらん男ですよ。

-- 先ほどゴルフをされるとおっしゃっていましたが、これまでもスポーツをされていたのでしょうか。

中川代表幹事 高校時代にテニス、大学時代はやらず、社会人になってからテニスを再開してから32歳くらいまで硬式テニスをしていました。テニスをやりすぎて肩を壊してしまったことがきっかけになり、ゴルフを始めました。私はウィークデーにはゴルフやらない、サンデーゴルファーとして友人の間では知れ渡っています。得意先の会合で平日にプレーすることはありますが、プライベートでは週末のみ。平日は社員が仕事しているのに、なかなかできませんから。

ところが、49歳の時に心筋梗塞で倒れて2年間はゴルフどころではなくなってしまって。新幹線にも乗りたくない、飛行機で海外なんてとんでもない状態でした。今は無理をしない程度にゴルフも、新幹線や飛行機の移動もしています。その時に助けていただいた先生とは、もう21年間のお付き合いになります。医学のおかげだと実感しています。

-- 体を動かすことは好きでいらっしゃるのでしょうか。

中川代表幹事 インドアとアウトドア、どちらかと聞かれればアウトドアが得意です。渓流釣りや海釣りも好きですし、バーベキューは率先してやる方で、家族や社員と一緒に楽しんでいます。キャンプも好きです。子どもたちが小さい時、家族で何にもないところでキャンプをしたことがあったのですが、夜、真っ暗になって「大丈夫?大丈夫?」と子どもたちに心配されたこともありました。

-- 岐阜県出身の若い方にメッセージをいただけますでしょうか。

中川代表幹事 メッセージはたった一つ「地元を愛しているなら、地元に残ってもらいたい」です。下呂市には開校100年を迎えた県立高校「益田清風高等学校(旧 益田高校)」があります。私も私の家族も卒業生ですが、今の卒業生のほとんどは就職や進学などで地元から離れてしまっています。

私たちも頑張って働く場所を作るので、都会に比べて家賃が安くて車にも乗れて、貯えができる生活が下呂でできるよ、と伝えたい。若い人たちには勉強をしてもらいたいし、自分の思うことをやってもらいたいと思いますが、自分を育ててくれた郷土をもっと大事にして欲しいとも、強く想います。