INTERVIEW
Leader's Voice
あらゆる社会課題の突破口「こどもファースト」の取り組みをさらに充実
Interview
柴橋 正直 市長
絵本の読み聞かせを通じて温かい家庭を築き
児童虐待のない社会にしたい
―― 令和6(2024)年度予算編成方針にて5つの政策ベクトルを示されています。その中には、市政の不変の方針とされている「こどもファースト」があります。あらためて一貫して「政策ベクトル」に掲げる「こどもファースト」にかける思いをお聞かせください。
柴橋市長 私の考えるこどもファーストは、あらゆる社会課題の突破口ということで、岐阜市政の不変の方針として取り組んでいます。その中でも特に2023年度、力を入れてきたのが絵本の読み聞かせです。私自身も子どもの頃、両親に絵本を読んでもらった記憶がありますが、お父さんやお母さんの膝の上にのせてもらって、ぬくもりを感じながら絵本の読み聞かせをしてもらうと、子どものこころが安定します。また絵本は子どもの想像力を豊かにしますので、子どもの成長段階における学びにつながると思っています。たくさんの本があって、読書習慣を持った家庭がある一方、デジタル時代ですからスマートフォンやタブレットが中心になっている家庭もあると思いますが、ぜひ子どもたちにはコミュニケーションの中で絵本に親しむことを取り入れてほしいと各家庭に伝えています。
ただ言葉だけでは十分によさは伝わりません。2023年3月に「柳ケ瀬グラッスル35」ができましたが、子育て支援のフロアを設けようということで4階に「ツナグテ」を開設しました。そこでは元気に走り回ったり、よじ登ったり、ワークショップをしたり、手遊びなどをすることができます。「ツナグテ」には読み聞かせコーナーを整備し、お父さんやお母さんに絵本を読んでもらって、「絵本っていいなあ」と思ってもらえれば、メディアコスモスで絵本を借りてもらうという一連のつながりで岐阜市の公共施設を利用してもらう仕掛けを作ったところ、大変好評です。読み聞かせコーナーでも、市立図書館の司書の方に来ていただいて定期的に読み聞かせのイベントを開催しているのですが、こちらも超満員です。
もう一つ、3階には「中保健センター」を移転し、10か月児健診時にも市立図書館の司書の方に来ていただいて絵本の読み聞かせや図書の貸し出しなどを行っています。
また2023年度は黒野児童館の幼児室をリノベーションして絵本のコーナーを作って、地域の児童館でも絵本に親しめるようになりました。こちらも好評をいただいていますので、2024年度以降はほかの地域でもリノベーションをして絵本を充実していきたいと考えています。
現在、社会問題の中に児童虐待があります。最終的には弱い立場の子どもたちに虐待という形で向かってしまいます。絵本の読み聞かせを通じて温かい家庭を築いてもらって児童虐待のない社会にしたいという思いもありますので、象徴的な取り組みではないかと考えています。
―― 市長さん自身も親御さんに読み聞かせをしてもらった思い出があるということでしたが、ご自身も親の立場として読み聞かせをしましたか?
柴橋市長 私の幼少期、家の中は絵本だらけでテレビがありませんでした。両親の教育方針で意図的にテレビを置かず、本を読もうということで両親は徹底していました。おかげで読書習慣が身につきましたし、今も本を読みます。私自身も子どもに読み聞かせをして、世代を超えてつながってきたと思っています。絵本はぜひおすすめしたいと思います。
―― 不登校支援に関する取り組みについてもお聞かせいただけますか?
柴橋市長 不登校は子どもによって理由は千差万別です。最終的には子どもたちが、いかに教育に結びつくかだと思っています。岐阜市では多様な学びということで、草潤中学校が令和3年に開校しましたが卒業生は進学して学びを続けてくれていますし、現在通っている子どもたちも自分たちのスタイルで学びを継続しています。
草潤中学校が非常によいという声をたくさんいただいていて、2023年度は草潤中学校の分校という形で5つの中学校に校内フリースペースを作りました。こちらも非常に好評で子どもたちの居場所になっています。進学の際、出席日数の少なさが内申点に影響するのではないかと心配される保護者の方がいらっしゃいますが、ここへ登校すれば出席です。まずは校内フリースペースに来てもらって、学びを継続できることが大事だと考えています。成果が上がっているので、2024年度以降も増やしていけたらと考えています。
ただ、校内フリースペースに出てくるところまでいけない生徒もいます。そこで2022年度からメタバースを活用した居場所づくりもスタートしています。参加された生徒も少なくて10名以下の時もありましたが、2023年度は100名を超えた時もありました。評判を呼んでオンライン上でつながりたいという子どもたちが増えてきています。アンケートを取ったところ、続けてほしいという声がたくさん寄せられましたので、こちらも継続していきたいと考えています。
子どもたちの学び方、つながり方は多様です。子どもたちにとって、その状態の時に最適なつながり方がどういったものであるのかをこれからも模索しながら進めていきたいと思います。不登校になって、孤独化、孤立化していくと、大人になるとひきこもりになります。ひきこもりの方に対する相談窓口なども作ったりしていますが、その前の段階である不登校の時に、どう学びにつなげていくかが、これからも私たちにとって重要なテーマになると思っていますので、こどもファーストの中心に位置づけて、これからも進めていきたいと考えています。
三輪、柳津、黒野地域で企業立地をサポート
市外へ流出する流れを反転
―― 話題は変わりまして、その他の政策ベクトルは、これまでの事業進捗、社会的背景などを踏まえ、それぞれをアップデートされたとお聞きしています。「経済活性化」を政策ベクトルに設定された思いをお聞かせください。
柴橋市長 市長2期目に挑戦するとき、岐阜市政のウイークポイントの一つが企業の立地であると考えていました。先輩方が様々な方針を掲げられてきましたが、どちらかというと岐阜市から市外へ企業が流出していくという流れが長く続きました。これを反転させようということで、企業立地を掲げています。三輪地域、柳津地域、黒野地域では元々、「ものづくり産業等集積地計画」が作られていましたが、なかなか進んでいませんでした。
せっかく岐阜三輪スマートICもできましたので、三輪地域の問題もしっかり取り組もうということで進めています。三輪地域の多くは農地です。農地に製造業を立地させようとしてもなかなかハードルが高いので、農業6次産業化の誘致ということで環境整備を進めたところ、2社が意欲的に手を挙げてくれています。
現在、企業と地権者との間に入って調整をしているところですが、調整が整えば実際に農業に関連する事業を行う企業が立地していくことになります。
次に柳津地域です。現在、市内には非常に元気な企業がありますし、人口減少の中で企業も最新の生産性の高い機械を導入して、この時代を生き残っていかなければいけないということで設備投資意欲が非常に高いです。ところが既存の場所で増築しようとしても、岐阜市の場合は周囲に住宅地域もあって難しいということで、これまでは市外に流出していました。さらに近隣市町の立地確保も少し難しくなっていますので、市内、市外も含めて企業が立地できる場所を確保しようということで、岐阜流通業務団地の東側で企業に立地していただけるよう整備を進めているところです。ありがたいことに多くの企業からお声がけをいただいており、今後の対応については地域の皆様のご理解を得ながら進めていこうと思っています。
現在は働き手が非常に限られていますので、近隣エリアに一定の方が住んでいる地域でないと求人を出しても人が集まりません。柳津は人口が増加している地域です。柳津を含めた市の南部は若い方々も多いですし、名神高速道路も近いです。進出したいという声が依然多いので、次年度以降も力を入れて取り組んでいきたいと考えています。
―― 黒野地域についてはいかがですか?
柴橋市長 2024年度末に(仮称)岐阜ICがいよいよ開通します。私が市長に就任してから、老朽化している岐阜薬科大学三田洞キャンパスも含めて、すべて、岐阜薬科大学本部キャンパスの西側に立地させるということで、これまで準備を進めてきました。いよいよ2024年度は地権者の皆様の理解をいただく時期ということで、ご協力がいただければ2028年度の完成予定で岐阜薬科大学の統合移転が進みます。これによって、岐阜大学と岐阜薬科大学という大きな学術拠点ができますので、大学の研究者、企業の研究者が一緒に連携していけるようなライフサイエンス拠点を形成していこうと考えています。岐阜薬科大学の統合移転が進まないと、次に進めませんので2024年度はしっかり目処をつけたいと考えています。このように長年の課題でしたが、三つの地域にしっかり企業を立地させて、若い人たちが働く場所をしっかり確保していきます。働く場所ができれば、当然若い人たちも岐阜市内に住み続けてもらえるので、2期目の重要なテーマとして捉え、順調に進めているところです。
―― スタートアップ支援についても教えてください。
柴橋市長 2021年7月、岐阜駅に直結した「Neo work-Gifu(ネオワーク岐阜)」にスタートアップ支援の相談窓口を設けるとともに、起業家や投資家たちが交流するイベントなどの開催を通じ、本当の意味で地域の課題が解決できる新しいビジネスを生み出していく人材を発掘中です。国もスタートアップ支援に力を入れていますが、地域の社会課題をスタートアップという新しい切り口で解決していってほしいというメッセージであると捉えています。これを実現するためには、若い世代の新しいチャレンジが必要不可欠で、そうした方々が岐阜市の中から生まれてくる、あるいは市外、県外から「岐阜市でチャレンジしたい」といって、岐阜市へ来ていただくため、現在、岐阜市版スタートアップエコシステムを構築し、更なる拡充を進めているところです。
一方で、若い方たちが起業マインドを持っていただかないとスタートアップは生まれてきませんので、2023年10月に武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所とアントレプレナーシップに関する協定を締結しました。すでに市立岐阜商業高校の生徒にアントレプレナーシップを学ぶ機会を作るなど、企業に就職するという道もある中、自分で新しいビジネスを作って社会課題を解決していくというチャレンジも促していきたいということからアントレプレナーシップ教育を推進しています。
また、産学官連携の観点も重要と考えていて、行政として、大学の研究者と企業を結びつけることにより、新たな研究成果とビジネスを結び付け、現実社会に実装されるために、起業者や投資家と岐阜大学や岐阜薬科大学などの研究者とのマッチングや実証実験のフィールド提供等の支援を進めていきたいと考えています。
仕事と子育てをしっかり両立できる環境づくり
―― 女性の就労、活躍推進に向けた取り組みも進められています。女性が活躍できる社会の実現に向けて課題だと感じられていることや、課題解決に向けた取り組みについて教えてください。
柴橋市長 二つの観点があると思っています。一つは、女性が活躍し、社会の中で一定の仕事をして所得も向上していくことは経済的自立につながります。所得が上がっていくことが子育てするには大事なことです。夫婦ともに一定の所得があって、子どもたちに安心して教育を受けさせて育てていくことができる社会を作ることが大事です。
もう一つは、わが国にはそもそもジェンダーギャップの問題があります。先進国において、ジェンダーギャップ指数が高い国は出生率(合計特殊出生率)も高い傾向があります。我が国のジェンダーギャップ指数をどう高めていくか。それは出生率にもつながる話です。これは経済の安定とパラレルなのですが、子どもを望んだ時にきちんと子育てができる環境を作る意味では経済的な自立、女性の活躍は不可欠だと思っています。
その中で岐阜市としてできることですが、結婚、出産、育児という流れの中で離職される方が一定数いて、圧倒的に女性が多いです。岐阜市役所でも子育てを理由に離職される方は全員女性です。私は「もったいない」「もう少し頑張ってみませんか」と声をかけているわけですが、同時に制度も変えてきました。これまで部分休業は、正規の職員は子どもが小学校就学前まで、また会計年度任用職員は3歳になるまで取得できていましたが、それ以降も部分休業と同様の働き方を整備するための新たな制度として、子育て部分休暇を創設します。この制度により、正規の職員も会計年度任用職員も小学校6年生までの子どもがいる場合、部分休暇を取得することができるようになります。
また、2023年10月には子連れ出勤の試行もしました。様々な事情で「普段の預け先に子どもが預けられない、でも今日この仕事をしないと滞ってしまう」といった時に、1時間だけでも子どもを連れて出勤できる制度です。子育てをしながら仕事をする職員の「働き方の選択肢の一つ」として制度を設け、仕事と子育ての両立に取り組んでいきます。試行においては、一定の成果はありましたので、今後は制度化していきたいと考えています。
このように仕事と子育てをしっかり両立できる環境を作っていって、まずは離職を防ぎたいです。でも事情があっていったん仕事を辞めた方が復帰したい、あるいは仕事はしたいけれど家にいなければならないといった時、現在はテレワークという働き方があります。そこで市内の中小企業の皆様に導入してくださいということでテレワークを活用したショートタイムワーク事業を実施しています。タブレットを無料で貸し出して、子育ての合間の短い時間でも能力を生かして働いていただける、企業にとっても高いスキルを持つ人材を活用することができるということで、女性も企業もお互いがWin-Winの関係で働くことができるチャレンジをしているところです。これも一定の成果が上がっていますが、もっと広がってほしいと思っています。
実際に子育てしながら働く場面では、保育所や、小学校における放課後児童クラブの環境を整備することが重要です。公立保育所については9カ所を民営化して、民間の皆さんと一緒に園舎も新しくして子どもたちの保育の環境をよくしています。放課後児童クラブは、ルール上は6年生までになっていますが、空き教室の問題や支援員が確保できないなどの理由で希望者全員が入れる状況ではありませんので、拡充しようということで力を入れています。すでに島校区では学校内に利用できる教室はなく、民間のテナントも限られていて借りられない状況だったので、学校敷地内ギリギリに放課後児童クラブ専用教室棟を建てて、子どもたちに安心して放課後の時間を過ごしてもらっています。
―― 2024年は、「こどもファースト」、「経済活性化」に、「岐阜を動かす社会基盤整備」、「幸せで豊かな市民生活」、「持続可能な社会づくり」の5つの政策ベクトルで取り組まれます。最後に、市長の思いをお聞かせください。
柴橋市長 2024年度は中心市街地活性化と多様な地域課題の解決を中心に取り組みたいと考えています。これまでに柳ケ瀬グラッスル35やセントラルパーク金公園が完成し、2025年度からはJR岐阜駅前においてツインタワーの再開発の工事が始まりますし、名鉄名古屋本線の鉄道高架事業も用地取得に入っています。長年の課題であった中心市街地のまちづくりは着実に解決していきます。
一方、地域にも多様な地域課題がありますので、これらも一つずつ同じように解決していこうということで、先行して三輪、柳津、黒野をそれぞれ進めてきましたし、長森もJR長森駅の整備が見えてきました。このように地域の皆様の長年の悲願をカタチにしていこうということで進めています。40万都市である岐阜市がこれからの時代も持続可能だと市民の皆様に実感していただけるようにベクトルをしっかり構えて頑張っていきます。
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