郡上市 山川 弘保 市長

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元気な若者のエネルギーも積極的に活用し
郡上の未来をみんなでつくる

元気な若者のエネルギーも積極的に活用し<br/>郡上の未来をみんなでつくる | 市町村長
元気な若者のエネルギーも積極的に活用し<br/>郡上の未来をみんなでつくる | 市町村長

Interview

郡上市

山川 弘保 市長

自然・環境・歴史・文化に焦点をあてた観光プログラムを展開

―― 「持続可能な観光地経営」の概要と具体的な取り組み内容について教えてください。

山川市長 私は1991年にスイスへ1年半留学したことがあります。当時1ドル125円だったわけですが、今は大変な円安になって逆のことが起きています。多くの市町村がインバウンドに向けた取り組みを進めていますが、中東問題や戦争が波及して金利が大きく変動する可能性はあります。

先ほどのスイスの話になりますが、スイスでは1カ所に腰を据えて、どこかへ出かけて、また戻ってくるという滞在をしていました。先日、明宝地区の古民家を改装した民宿に泊まられたアメリカの方は、その民宿に4泊ほどしたまま「今日は白川郷へ行ってきます」「今日は高山へ出かけてきます」という旅をしていたという話を聞きました。これまでは通過型観光が大半を占めていたわけですが、従来のような旅行を提供するだけではいけないと考えています。

初代の硲孝司市長は常々「農林水産業に立脚した観光立市を目指す」と言われていました。当市には緑がありますし、長良川の最上流でもありますので、自然に根づいたツーリズムを考えていきたいと思っています。〇〇会館という施設を整備するのではなく、森林空間や川を利用したり、農業体験などをからめたプログラムも作っていきたいと考えています。

これもスイスの話になりますが、山の中にハイキングコースが何本も整備されていて、半日コース、1日コースなどをゆっくり体験しながらその地域を楽しんでいかれます。当市には、円空、高賀山信仰、石徹白の白山信仰などがあります。そうした宗教文化を結ぶ道のような、また、グリーンに関連する新しい試みにも取り組んでいきたいと思っています。

白山中居神社

石徹白大師堂入口

石徹白大師堂

―― 郡上おどりはもちろん大切ですが、それぞれの地域で育んできた文化や頑張っている人たちにも、もっと目を向けようというわけですね。

山川市長 はい。選挙期間中にたくさんの講演会をしたのですが、ある時、当市出身で現在は名古屋市に住んでいる方から貴重な話を伺いました。「山川さん、郡上おどりは確かにいいけれど、北部でいえば石徹白があって白山文化がある。高鷲はスキーやアウトドアで遊ぶことができる。白鳥へ行くと、若者が元気で新しい店を作り上げている。名古屋から見れば高鷲・白鳥ではなく“北郡上”というひとくくりになりますよ。北郡上という概念で、食べて、遊んで、泊まるということを設定していくことが必要かもしれないですよ」と言われました。なるほどと思いました。“北郡上”はこれから多くの方に訴えかけていくには、とてもよいキーワードではないかと思っています。「私の地域は観光の要素が何もありません」と言われる方もいますが、よく見ると素晴らしいものがあるはずです。そうしたことを地元の方にも改めて見直してもらう機会にもしたいと思っています。

郡上おどり

郡上市のスキー場

今回の選挙の投票率は79.34%で、とても高い数字でした。東海市長会では、「山川君、8割が投票する中を、よくやり抜いてきたな」と言われました。その選挙戦を通じて一つ驚いたのは若者の力が大変強いということです。若い世代は、都市部から持って帰ってきたものを地元で実現し始めています。「何か補助をしようか」と聞いてみると、「補助はいらないです」という答えが返ってきます。「補助はいらないの?」と聞くと、「報告書を書かないといけないし、使い勝手が悪いのでいりません」と言って、自分たちだけでSNSでつながってマルシェを開催するなど、上手に多くの人数を集めています。それを見ていると、これまでのいわゆる補助金誘導の観光、まちおこしとは違う目で若い世代の活躍を見ていかないといけないと感じます。

私が住んでいる高鷲地区では、地元の学校を卒業した8割の若者が戻ってきている地域があります。私たちの世代は、「しっかりした定職を持ちなさい」「給料をしっかり取って家庭を維持しなさい」という考えが大事でした。ところが私が知っている若者の中には、いったん外へ出て木工を学んだ後、地元へ戻って遊具やおもちゃなどを作っている人がいます。それだけでは食べていけないので、土日は魚釣り体験をSNSで募集して、その後には自分で獲ってきたジビエをふるまっています。おもてなしでいえば、「こんなことでいいの?」と思うようなことでも多くの若者が集まってくれて収入になり、奥さんをもらって楽しく暮らしています。自分たちが考える概念とはまったく違っていて、猟師を兼任する若者もたくさんいて、ジビエ関係の店を出している子もいます。〇〇協会を作ろうなどという面倒なことはしませんが、横のつながりがとてもいいです。普段はバラバラに動いているのですが、進むところは同じで、いざ「これをやろう」となったときは大きなエネルギーになっています。そうした考えを許容しないと、若者は窮屈に思って帰ってきてくれない可能性があります。自分たちの考え方を変え、若者の考えを最大限に認めて、市としてどのようにコミットしていくことができるかを考えていきたいと思います。

若者の農業参入や新規就農を積極的にサポート

―― 次に「担い手確保と農地維持」の概要と具体的な取り組みについて教えてください。

山川市長 私は趣味が山仕事と農作業で、自分自身もずっとやってきたことなのですが、当市は中山間地域で農業をやっても割に合いません。米も木材も国際価格ですからこれ以上の上昇は難しいでしょう。では荒れていく農地をどうしていくのか。現在、国からの補助はありますが、小分けにしても高齢化してなかなか対応できません。トラクターや田植え機など機械があればできますが、機械が壊れた瞬間にできなくなります。田んぼで一番厳しいのは草刈りです。炎天下で法面の草刈りなど、本当に大変な作業でとてもできないです。

そう考えたとき、本当に農地を維持していきたいのであれば、地域を守ってくれる若者に対して直接支払いをするしかないと思っています。ヨーロッパでは直接支払いをしているところがあります。スイスで、大変美しい緑の風景が広がる場所でチーズを作って、観光客も見学に来る牧場があります。でも、それだけでは生活が成り立ちません。直接、所得補償をしています。

会社に勤めている友達に負けないぐらいの所得補償をしてもいいですかと市民に聞いて、同意を得て、地域の草刈りや美化活動をしてもらうことに大きく舵を切らない限り、農地は守れないと思っています。選挙の時に問うのか、議会を通して皆さんにお示しをして問うのか、まだわかりませんが、それで同意を得ることができれば割に合わないところでもキレイにしてくれます。ばらまきではなく、地域をしっかり守りますという若者に対しての投資が、これからは必要になると考えています。成功するかどうかはわかりませんが、壮大な社会実験をしていかないといけないと思います。

郡上市の農地

―― 市内にはたくさんの農地があるわけですか?

山川市長 条件のいいところは農業法人が引き受けています。ただ、小さい田んぼ、急傾斜地の田んぼは「やりません」と言われます。でも、小さい田んぼも先人たちが少しでも収穫量を増やすために開拓した場所です。何もせずに山が田んぼに変わったわけではありません。先人の苦労があって、現在があるわけですから、そうした思いも大切にしながら若い世代に伝えていくことができたらと考えています。

農業が今のトレンドだというような考え方で、補助金という仕掛けではない新しい形での仕掛けを探していきたいと思っています。話は少し違うかもしれませんが、敬老会でお金を配るのもいいのですが、60代、70代で元気な方はたくさんいますから、防犯活動で巡回してもらう、美化清掃などをしてくれたら余分に活動費を出しますからどんどん動いてくださいということで補助を出すのはどうだろうかと思います。何もしていないのに商品券を配るのではなく、対価として補助を出すという考え方です。農業同様に、いろいろな分野で新しい形の誘導を模索していきたいと思います。

自ら体験を積み重ねる“実学”に力を入れる

―― 最後に「学びの郡上モデルの創出」の概要と具体的な取り組みについて教えてください。

山川市長 日置前市長が「郡上学」を創設されて、たくさん開催されてきました。私が住んでいる地区でも開催されましたのでお手伝いをしましたが、現場でやる実学の素晴らしさを実感しました。私の地区では蜂の巣取りがありました。クロスズメバチの巣を探して、巣を取って、ご飯と炊いて食べました。もう1班は、秋に名人と一緒にキノコを採ってきました。体で体験するということは、地域のことを非常に覚えていってくれます。郡上学は最近、座学が増えていましたが、若いころから体に染み込ませることがとても大切だと思いますので、もう一度、実学に力を入れていきたいと思います。

私自身、子どもの頃は分校で育ち、1年生が6人、2年生が8人で先生は1人という、いわゆる複式学級で学びました。弁当を持っていって、母親が2人ずつ給食室のようなところで、交代で味噌汁を作ってくれました。おおらかで、実学も多くて、今の私を形成してくれた原点だと思っています。当市は山が多いですからフィールドはいくらでもあります。郡上本来の遊びや、縄をなうなど地域に伝わる文化も伝えていくことができたらと思っています。

郡上学(マイ下駄作り)

郡上学(郡上かるた)

篠脇城跡の郡上楽

郡上学(篠脇城跡)

 

郡上市役所

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郡上市の情報

面積:1,030.79km2
人口:39,156人(令和4年12月1日)
市の木:もみじ
市の花:こぶし
市の魚:あゆ

名所・旧跡・観光

郡上おどり(重要無形民俗文化財)
郡上宝暦義民太鼓
白鳥おどり
宗祇水(名水百選)
古い町並み
郡上八幡城
郡上八幡旧庁舎記念館
大滝鍾乳洞
阿弥陀ケ滝(日本の滝百選)
石徹白の大杉 (国の特別天然記念物)
めいほう牧場
めいほうスキー場
美並ふるさと館(円空ふるさと館・美並村生活資料館)
ひるがの高原分水嶺公園
牧歌の里
古今伝授の里フィールドミュージアム
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高山市|関市|美濃市|下呂市

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