INTERVIEW

Leader's Voice
Interview
山川 弘保 市長
山川市長 市長に就任して1年が経過して、市民から特に不満の声が出ることもありませんでした。ただ、今年積雪が多くて除雪費がかさみ20億円を超えました。これは1年間の建設予算に匹敵する数字です。財政調整基金が一時的に1億2千万円まで減りました。一部は特別交付税や国土交通省の交付金による手当もありますが、全額戻るわけではありません。その意味では財政面が脆弱で、そのことを市民にわかる形でお示ししようと考えました。家計でいえば、500万円の収入があって、借金が400万円、貯金が2万円しかない運営で、貯金がどんどん減っていました。市民はそのことに気づいていませんし、平和だと思っていました。昭和から続く事業をそのまま継続すれば不満はでませんが、財布の中は空になっていく。それがわかったことが一つです。
もう一つは、人口減少の中で子どもの数が市内全域で減っています。これに対して当市はこれまで何かやってきたのかと振り返ったとき、なかなか積極的ではありませんでした。市民も生活が苦しいですから要望があります。つまり足元を見る、今を見た行政になっていました。起債は将来を見越して借金をするものです。当市の将来を担う若い世代に対して、その説明がつくのかという話を市民にしました。
若者が当市へ帰ってきて子育てをしたくなる気持ちを醸成しない限り子どもは増えません。昨年度、当市全体での出生数は138人でした。今年度の推計は107人です。昨年度138人という数字を市民に示して、何とかしなければいけないと言いました。その時に若い世代にシフトしよう、若い世代が帰ってこられるような住宅政策等を進めて若者が活躍できる場を与え、女性にもやさしいまちを目指す事としました。そしてマスコミにも取り上げられましたが、年配の方に配っていたお祝い金を一部やめて子育て分野へ再配分するという前代未聞の政策を断行しました。
山川市長 はい。よく分析してみると60歳というとかつては老人でしたが、今は60歳では敬老会に招待されません。70歳でも招待されず、75歳を過ぎると招待されるようになります。敬老会では、かつては主催者の自治会等がお弁当をとって、年配の方を労っていました。しかし市内の自治会に聞いたところ、今では8割が商品券を配っています。個人給付という形でお金を回すという事業に変わってしまっていました。
平和だと思っていたところ組織も脆弱になっていました。青年団が消えました。婦人会も消えました。消防団も消滅の危機です。補助金を配り続けるという事により、各団体は考える事を止めてしまいます。時代の変化があろうがなかろうが今までと同じ、それが組織を弱体化しているのかもしれません。その中で年配の方だけに商品券を配り続けることをいったんやめて、本当に困っている買い物難民の方の移動販売車に援助する全体給付型に変えようということで方向性を決定しました。
郡上市内を巡回する移動販売車
それを含めて1億3千万円を削り出し、中学生の給食の無償化に充てました。 また、これまでは3世代で住むと補助金が出るような形でしたが、それをやめて若い世代が郡上市産材を利用し家を建てる際に思い切って上限100万円を補助することに変えました。
年配の方に感謝の気持ちを表すのは当然ですが、平和だと思っていたけれどシニアクラブの運営もできなくなってきていました。このまま波風立てずに進めば消えてしまいます。今回シニアクラブの在り方について大きな問題提起をしました。いろいろなご意見もありましたが、1人いなくなり、2人いなくなり、気付かないうちにシニアクラブの存続が困難になりますと話しました。すると、シニアクラブのあり方を検討するための委員会を自ら立ち上げてくださって、これからどうすべきかを話し合っていただく機会ができました。これは大変ありがたいと思っています。今まで波風立たない鏡のような水面だったところに石をドボンと入れたことによって波が出る、下に沈んでいたガスが一気に噴出してきました。でも本来は一つずつ解決していかなければいけないことだったと思います。これ以上先送りできないことは誰かがどこかで始めなければなりません。市長に就任してようやく少しずつ進み始めたところです。若者へのシフトという点では、2、3年後に数字の変化が現れたら効果が出たと判断できると思います。すべての自治体が試みていることだと思いますが、もし良い傾向が出てきたら私が市長になった意味があったのだと思います。
山川市長 市北部のスキー場に関しては、全国のスキー産業全体が縮小傾向にある中で、年間120万人ぐらいの入込数です。横ばいで頑張ってくれています。観光連盟を中心に海外への売り込みも行っています。郡上の踊りによる集客もまずまず順調です。今後は、郡上の広大な緑の山や清流長良川を中心とした自然をもっと楽しんでいただけるような取組みもしていく必要があります。豊かな食の楽しみや1,000年を越える白山文化など市全体を使った取組みが大事だと考えています。
郡上市内のスキー場
郡上おどり
白鳥おどり
若い感覚も必要です。多様なニーズに応えるには、若者が中心になって市の観光のあり方を提案してもらわなければなりません。その意味では、いろいろな既存事業を閉じましたが、一方で若者による新しいグループが形成され、次世代への取組みが始まっています。これまでの補助事業を見直す中で高校生から30代を中心とした方たちが、「自分たちでやらないといけない」と言い出しています。グループが有機的につながって、中学生から大人まで巻き込んでいます。
今年の白鳥春まつりは、これまで商工会中心で開催していましたが今後の運営ができないことになったので、有志が中高学生を巻き込んで音楽を中心にして駅前で開催しました。約5,000人もの人が集まってくれました。この事業には市の補助はゼロです。商工会と協力し自分たちでも地元企業を回り協賛を募り、世代を超えたグループみんなの力で開催しました。こういう動きが出てきたことは、大変ありがたいことです。
「白鳥春まつり」で演奏する白鳥中学校ブラスバンド
山川市長 そう思います。これまで行政がコミットしすぎていた部分があったと思います。補助金は日本をつくるうえで大きなエンジンになりました。ただ、それに慣れすぎると抜けられなくなります。それに対して、補助の恩恵をあまり受けていない20代、30代の方たちが手を挙げてくれました。クラウドファンディングを使う、SNSで外の人を呼び込むという手法で多くの人を集めました。
行政主導の時代は終わって、市民がまちに対して自分達は何ができるかを考え直す時代になってきたのではないでしょうか。今後私達に必要なのは住民自治だと思います。それができる自治体かそうでないかで、未来は大きく変わるでしょう。9月23日には、郡上市合併記念公園で新しい体験型イベント「ミチトキテン michi to kiten」も初めて開催されます。市内企業を訪問し協賛金を募り、企画・運営もグループ自ら手がけます。20代、30代が中心ですが、オブザーバーとして地域の年配の方も入っています。どのような事業になるか非常に興味がありますし楽しみにしています。若い力が動き出したことをうれしく思いますし、そのエネルギーの強さを実感しています。この新しい動き、流れを大事にしていきたいと思います。
ミチトキテン michi to kiten
〒501-4297 岐阜県郡上市八幡町島谷228番地
TEL.0575-67-1121 FAX.0575-67-1711
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面積:1,030.79km2
人口:37,105人(令和7年9月1日)
市の木:もみじ
市の花:こぶし
市の魚:あゆ
郡上おどり(重要無形民俗文化財)
郡上宝暦義民太鼓
白鳥おどり
宗祇水(名水百選)
古い町並み
郡上八幡城
郡上八幡旧庁舎記念館
大滝鍾乳洞
阿弥陀ケ滝(日本の滝百選)
石徹白の大杉 (国の特別天然記念物)
めいほう牧場
めいほうスキー場
美並ふるさと館(円空ふるさと館・美並村生活資料館)
ひるがの高原分水嶺公園
牧歌の里
古今伝授の里フィールドミュージアム
白山文化博物館
高山市|関市|美濃市|下呂市
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