INTERVIEW
Leader's Voice
「オーガニックビレッジ」を宣言。地域ぐるみで有機農業に取り組む
Interview
佐伯 正貴 町長
就農希望者を受け入れる体制が確立
―― 白川町の最近の話題について教えてください。
佐伯町長 当町にとっては人口減少が最大のネックになっています。去年生まれた子どもの数が18人でした。町の全人口は約7,300人ですが年間200人ぐらい人口が減っていて、5年間では1,000人減ることになります。生まれる子どもの数に対して亡くなられる高齢者の数の方が圧倒的に多いので、その部分の対策は難しいですが、移住者の呼び込みに力を入れて人口減少を少しでも緩やかにしていきたいと考えています。
その中では、黒川地区に有機農業を始めたいということで移住される方が増えています。3月には県内で初めて「オーガニックビレッジ」宣言を行いました。
―― 白川町には、なぜ有機農業を始めたいと思う方が集まるのですか?
佐伯町長 平成10年に10人ほどの農家が集まって有機農業の勉強会をスタートしたのがきっかけになります。平成23年にはNPO法人「ゆうきハートネット」も立ち上がって、そのネットワークの中で就農希望者を受け入れる体制ができあがって,今は空き家が出ると、すぐに借り手がつくような状態になっています。
―― 有機農業というと、大変な手間がかかるイメージがありますが、どうなのでしょうか?
佐伯町長 確かに手間はかかります。ただ、買っていただく方は価値を認めていただけるので、一般的な野菜に比べると高価格で購入していただけます。現在は、名古屋市・栄のオアシス21で開催されているオーガニックファーマーズ朝市村で買っていただいたり、あるいはファンを作って直接取引されています。
―― ファンづくりのためのイベントなども開催されているようですね。
佐伯町長 9月には「小農フェス」を開催しました。農園の視察ツアーや講演会、マルシェなど多彩な内容で盛り上がりました。ゆうきハートネットのメンバーの一人が「農LAND BEER」というクラフトビールの醸造場を立ち上げたのですが、当町のお米や原木椎茸を混ぜた“農夫がつくるクラフトビール”のお披露目を兼ねた交流会も開催されました。こうしたイベントを通じてファンを増やして販路の拡大にもつなげているようです。
―― 黒川地域は“有機のまち”といったイメージで移住者が多く集まっているわけですが、どういう理由からなのでしょうか?
佐伯町長 私自身も黒川在住なのですが、よくわかりません(笑)。新しいものが好きで、面白いものが好きで、細かいことを言わない人が多いという部分はあるように思います。ただ、黒川地域の全人口に占める移住者の割合が圧倒的に多いということはありませんが、中学校と小学校に通う児童生徒に関しては、移住者の子どもさんが大勢いて、ありがたいことです。移住者は就農希望者が多いのですが、バイオリニスト、シンガーソングライター、イラストレーターなど様々な職種の方もいて、何か居心地のよさを感じる部分があるのかもしれません。明治22年に建てられた「黒川東座」という芝居小屋があるのですが、コロナ禍もあって、4年ぶりに地歌舞伎を開催しました。私も役者として出演したのですが、開催するにあたってはスタッフの半数近くを移住者の方が担ってくれました。その意味では移住者のおかげで地域文化もつないでいくことができているので、これも非常にありがたいことです。
豊富な森林資源を生かした新庁舎を建設
―― ほかにも話題はありますか?
佐伯町長 庁舎の移転計画があります。令和7年5月の完成を目指していて、当町の資源である木材をふんだんに使った庁舎になる予定で、すでに使用する材料について町有林で確保しています。ただ、この地域は水害の心配があり、その対策が重要になりますので、1階部分は鉄筋コンクリートで2階部分を木造にする予定にしています。1階は広めのホールを設けて、お茶が飲めるスペースも作って、町民の憩いの場としても機能することを期待しています。
産官学の連携による、まちの課題解決
―― 産官学の連携協定も結ばれたようですね。
佐伯町長 はい。3月には名古屋市立大学とコミュニティネットワークセンターの三者協定を結びました。学生とケーブルテレビの職員と当町の職員が集まって15回ぐらい勉強会を開催しました。その中で、当町の独居家庭の見守りが話題になりました。以前、各家庭にタブレットを配布して朝ボタンを押してくださいという見守りシステムを導入していたのですが、押してくれないときもあり、直接訪問して確認することが頻繁にあったため続かなくなってしまいました。そこで、各白川町にはほぼ全家庭にケーブルテレビが入っています。お年寄りは家にいれば1度くらいはテレビを見るだろうということで、テレビがつかないときに訪問する、あるいは家族の方にメールが届くような仕組みができないか検討しているところです。
―― もう一つ、協定を結ばれたようですね。
佐伯町長 はい。8月に東濃信用金庫と包括連携協定を結びました。人口が減っている中で、事業を行っている方の跡継ぎがいないという問題が出てきています。業績がよいにもかかわらず廃業せざるを得ないということはもったいない話です。身内でなくても、やってみたいという方があれば事業承継できる支援体制の構築について東濃信用金庫との連携の中で進めていきたいと考えています。
もう一つは、創業支援です。当町では新しく事業を始めるための補助金を用意していて、これまで35件ぐらいの支援を行ってきました。ただ、中には途中で事業が立ち行かなくなるケースもありました。事業が本当に成り立つかどうかの判断は、行政では難しい部分もあります。事業の継続性や資金繰りなどのサポートに関しても東濃信用金庫にしていただけますので、創業支援や産業の振興にも力になっていくと思います。
―― 最後に、公共交通の話題についても教えてください。
佐伯町長 当町の公共交通利用者の多くは高齢者や高校生であり、それ以外の世代は公共交通を利用する機会がほとんどありません。電車の乗り方について学校で練習するぐらい、普段、子どもたちは公共交通を利用することがありません。ほとんどが親による送迎です。そこで8月に「公共交通を使って行く!イオンモール各務原おでかけモニターツアー」を開催しました。「親が送迎しないとどこにも行けない」という思い込みをなくして、公共交通は「意外と使える」「意外と便利」なことに気づいてもらえたと思います。日常的に公共交通を利用することで、親に頼らず自分たちで出かけられることを知ってもらい、今後も継続した公共交通の利用につなげていきたいと思います。
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白川町の情報
面積:237.89km2
人口:7,429人(令和4年12月1日)
町の木:ヒノキ
町の花:岩つつじ
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