INTERVIEW
Leader's Voice
南部地域の自然資源の活用を進め、観光を多極化。分散型観光の構築を目指す
Interview
成原 茂 村長
観光客数は回復基調、観光消費額は大きく伸びる
―― 今年の新しい動きについて教えてください。
成原村長 コロナ禍は大変で入り込み客数も大きく落ち込みましたが、昨年はインバウンドを中心に入り込み客が戻ってきて、約180万人まで回復してきました。先日、高山市の卸業者が初めて企業版ふるさと納税をしてくれました。「なぜ、企業版ふるさと納税をしてくれる気になったのですか」と尋ねたら、「売り上げが2倍に増えたので、感謝の意味も込めてふるさと納税させていただくことにしました」と言われていました。
当村への入り込み客数が一番多かったのが2019年で216万人です。昨年は戻ってきたとはいっても、過去最高を超えたわけではありません。にもかかわらず、売り上げは2倍を超えたということは、賑わいや観光需要が戻ってきたのだと実感しています。
―― 観光客が戻ってきたということですが、観光マナーについてはいかがですか?
成原村長 インバウンドについては質が変わったと感じています。これまで台湾からのお客様が多かったのですが、ここに来てフィリピンやベトナムの方が増えてきて、観光マナーが徹底できていない部分があります。欧米の方も増えています。彼らは石の文化ですからタバコのポイ捨ても目立つようになりましたので、昨年から観光マナーの啓発を一からやり直そうということで取り組んでいます。
「白水の滝」が国指定名勝の指定を受ける
―― 話題は変わりまして、「白水の滝」が2月に、国指定名勝に指定されましたね。
成原村長 はい。さらに、昨年11月にはUNWTO(国連世界観光機関)による「ベストツーリズムビレッジ」に認定されました。その意味では、荻町集落を中心とした地域は持続可能な社会ですし、白水の滝については大白川を中心にした自然資源を活用する要素ができたと考えています。
先日、ある総理補佐官と話す機会がありました。その際、「白川村はオーバーツーリズムですね。各省庁に連絡してありますからオーバーツーリズム対策をしてください」と言われました。それに対して私は、「荻町の世界遺産集落は確かにそうですが、南部地域は閑散としています。荻町だけを見てオーバーツーリズムだといわれるのは困ります。これから分散型観光を手掛けるので、そのためのオーバーツーリズム対策をやりたいです」と答えました。
その後、観光庁の「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を観光庁へ申請したところ、モデル地域に選定されました。また、地域活性のために使える特別交付税があって、それもオーバーツーリズム対策として活用できるという話があります。特別交付税や補助金などもうまく活用しながら、オーバーツーリズム対策や分散型観光を進めていくことができたらと考えています。
―― 分散型観光とは、具体的にどういう取り組みになるのですか?
成原村長 当村には温泉やキャンプ場などがありますので、その活用も進めたいです。白水の滝も国指定名勝になりましたので、自然資源の活用をさらに進めていく必要があります。荻町世界遺産集落はキャパシティ的にオーバーになる場合があります。そうした場合に、温泉、キャンプ、アウトドアなど自然資源を活用した観光に導きたいです。一極ではなく多極化できる体制、ルートの構築を考えていきたいと思っています。
真の観光地を目指すためには量から質への転換が必要
―― 話は少し戻りますが、入り込み客数が180万人まで戻ってきたという話がありました。大変な数ですが、これは、リピーターが訪れているということですか?
成原村長 違います。リピーターが少ないことは大きな問題だと考えています。リピーターではない人が毎年、それだけの数来ていただけることは観光地としてありがたいことではありますが、コロナ禍では約30万人まで落ち込みました。それはリピート率が低いからです。リピート率が高ければ210万人が30万人になることはなくて、100万人ぐらいになると思います。本音を言えば、どんな状況になっても、それぐらいの数はキープしたいです。
初めての方だけで、これだけのお客様に来ていただけるのならば、逆に言うと数を絞ってでもリピート率を上げていく方がいいと考えています。私は以前から言っていますが、量より質です。180万人よりも80万人で同じお金を消費していただけるならば、観光地としてはその方がいいです。その方向に舵を切りたいと言いながら、なかなか進んでいない現状があります。
現状は高山市や金沢市を中心にして、各地域を観光するケースが多いです。当村は宿泊施設が少ないこともありますが、ベースにはならなくて通過型の観光にとどまっています。そこから脱却しない限り、観光消費額は伸びませんし、本当の意味での観光地にはならないと思います。
―― 最後になりますが企業誘致についてはいかがですか?
成原村長 これは企業誘致ではなく、企業進出の話ですが、24時間稼働でミネラルウォーターを生産する企業の進出が決まりました。私も当村から軟水が湧出していることは知っていたのですが、当村に世界一の軟水ではないかという思われる湧水があるようです。こうした企業進出や誘致ができることによって雇用の確保ができます。その意味では、少しずついい流れができつつあると思っています。
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白川村の情報
面積:356.55km2
人口:1,516人(令和4年11月1日)
村の木:ブナ
村の花:白山シャクナゲ
名所・旧跡・観光
白川郷(荻町集落)
御母衣ダム、御母衣湖
飛騨トンネル
白山スーパー林道
どぶろく祭り
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