INTERVIEW
Leader's Voice
世界中の岐阜県人会をつなぎ、岐阜の文化を世界にアピール
Interview
長屋 充良 会長
ブラジル岐阜県人会 会長
長屋クリニック 経営 カイロプラクター・理学療法士
「県連日本祭り」で岐阜文化を発信
―― ブラジル岐阜県人会さんが参加されている、ブラジルの「県連日本祭り」の様子はいかがでしょうか。
長屋会長 日本人がブラジルに移住を始めた1908年から今年は116年で、「県連日本祭り」は今年で25周年を迎え、7月12日〜14日の3日間で18万4千人が集まりました。当初は郷土食のみの紹介でしたが、徐々に日本文化の紹介が増え、踊りや太鼓、日本企業のブース出展などが行われています。今はアニメやコスプレの催しもあり、来場者の7割以上がブラジルの方で、今はブラジル中に広がり、各地で日本祭りが開催されています。
―― 岐阜はどのような文化を紹介しているのでしょうか。
長屋会長 県人会の活性化と若い方にも関わっていただきたいという思いがあり、2018年にブラジル岐阜県人会の会長を務め始めた時から日本祭りに参加しています。最初は鶏ちゃんや五平餅だけでしたが、今では郡上踊りの愛好会をつくり、会場で1曲目に「かわさき」、2曲目に「猫の子」や「やっちく」を、3曲目に「げんげんばらばら」、最後に「春駒」を披露しています。そして、最後はダンシングヒーローで会場のみなさんと踊って盛り上がっています。
―― 岐阜に戻られると、郡上踊りには参加されるのでしょうか。
長屋会長 今回の帰国で参加してきました。踊り免状(免許状)をいただきたくて目立つように踊っていたのですが、お声がけいただけたと思ったら、その時の曲が「猫の子」で、「うまいんだけど手のふりがちょっと違う」とのことで、免状は取れませんでした。一晩で6万人集まる中に審査員は20人ほどしかいらっしゃらないので、お声がけいただけただけでも嬉しかったです。 ブラジルの愛好会は月に2回練習をしており、いろいろなところに呼んでいただいて披露をしています。
覚書締結をきっかけに開催された「ふるさといいもの展」
―― 「県連日本祭り」と同日開催された「ふるさといいもの展」についても教えてください。
長屋会長 2021年に岐阜県人会インターナショナル(GKI)を設立して会長を務めており、2022年に「岐阜県人世界大会」を開催しました。この時に締結した「岐阜県と岐阜県人会インターナショナル(GKI)との県産品の海外展開に関する連携覚書」がきっかけとなり、「第1回ふるさといいもの展」を日本祭りと同時開催しました。県連(ブラジル日本都道府県人会連合会)が主催し、農林水産省、JETORO、JICAの共催で日本の海産物などの県産品を紹介し、商談を行うBtoBイベントです。JICAから助成金を受け、農林水産省に協力いただき、47都道府県3事業者、総勢約130名の方がブラジルに来て、40県人会で50ブースに参加していただきました。特に海外でブームになっている日本酒が好評でした。
―― ブラジルでは日本酒が好まれているのですね。
長屋会長 これも経緯がありまして、2023年の7月に「ブラジル岐阜県人会創立85周年・岐阜県人ブラジル移住110周年」の記念式典の際に県産品の展示会をしました。展示を予定していた日本酒が残念ながら、飛行機の欠航で間に合わなくて、展示会後に到着したのです。そこで、県の県産品流通課さんにお願いをして12月に「岐阜県産日本酒試飲会」をサンパウロ市で開催し、日本酒コンクール「クラマスター」でプラチナ賞を受賞した「玉柏(たまかしわ)・純米大吟醸」(八百津の合資会社山田商店さん)などを現地の飲食店さんや輸入業者さんに紹介したところ、大変、盛り上がりました。 いいもの展では全国からいろいろな酒蔵さんに出展していただき、岐阜県からは大垣市の三輪酒造さんと土岐市の千古乃岩酒造さんに参加いただきました。お二人と県産品流通課の岡本さんには「県連日本祭り」の前日に行った「南米岐阜県人の集い」にも参加いただき、ブラジル岐阜県人会の会員のみなさんと交流をしました。
―― 日本や岐阜に関するさまざまなイベントを開催されていますね。
長屋会長 いろいろなイベントが重なり、大変、忙しい時期だったのですが、日本から参加されたみなさんには、日系社会のパワーやブラジル人の日本文化に対する興味の強さを体感していただくことができました。 ブラジルは世界で唯一、47都道府県人会が揃っている国で、先ほども申し上げたように、日本人がブラジルに移住して116年になります。もう4世や5世、6世の世代になるので、日本語も希薄、県庁や県人会とのお付き合いも希薄になってきています。このような理由もあり、いいもの展の開催は母県とのつながりをもっと強くすること、また、県人会に若い方が増えてさらに活性化させたい目的もありました。
―― いいもの展はこれからも続けられる予定でしょうか。
長屋会長 その日のうちに日本酒の注文が120本あるなど結果が出ているので、持続可能なイベントにしていきたいと思います。また、来年は日伯外交樹立130周年になるので、またいろいろなイベントを開催できたらいいなと思っています。
―― 長屋会長が日本食の中でほっとする味を教えてください。
長屋会長 味噌汁です。ブラジルでは日本食の購入もできますし、レストランで日本食を口にすることもできます。私はご飯派のため、朝昼晩はできる限り味噌汁を飲んでいます。岐阜は味噌文化なので、とても落ち着きます。あとは漬物も好きなので、ご飯、味噌汁、漬物、もうこれさえあれば最強です(笑)。ただ、ブラジルの水は硬水のためか、ご飯を炊くと米は立つのですが、味が違うので、日本ではご飯を食べられれば何もいらないですね(笑)。 ブラジルにはラーメン文化がありますし、日本館がありますし、日本文化を気に入ってくださっています。アニメを通じて日本語に興味をもってくれたり、日本で勉強をしたいとか、日本企業で働きながら日本と関わりたいと思っている方がたくさんいます。
岐阜県人会インターナショナルの活動を通じて、岐阜へ恩返し
―― なぜ、これほどまでイベントを実現されるのでしょうか。
長屋会長 岐阜に恩返しをしたい思いがあるからです。海外へ出ると自分の生まれたところが懐かしく、家族も恋しくなり、岐阜や日本が見えてきます。私の板取の実家の隣には山椒があり、小さい頃、母親が山椒の佃煮を作ってくれていました。本当はウインナーの方が好きだったので、今ではあのような高級品を嫌だと言っていたことに申し訳ないという気持ちがあります。年齢もあるかと思いますが、海外へ出たことで価値観が変わりました。そういった中で、自分が生まれ育った岐阜、自分を育んでくれた岐阜に対する恩返しをしたいという思いがあり、GKIを設立しました。 12年ほど前にブラジル岐阜県人会のお手伝いを始めた頃から、県人会のネットワークは大事だと考えていました。そして、コロナ禍にオンラインでインタビューに答えた時、これなら世界中が繋がると思い、GKIを創立することができました。創立時に古田知事から「頼れるパートナーになることを大いに期待する」ともったいないお言葉をいただき、県庁のバックアップのおかげで1年5ヶ月後には第1回世界大会を開催、県産品の海外展開に関する連携覚書の締結、いいもの展まで発展させることができました。世界大会は4年ごと、次回は2026年の開催を予定しています。
―― GKIさんの普段の活動についても教えてください。
長屋会長 年に3回、オンライン交流会(旧:オンライン定例会)を行っています。岐阜に関するさまざまなジャンルの有識者からお話を聞き、岐阜のことを勉強しよう、知ろうという「岐阜学」をメインに、毎回、世界中の岐阜県に関わる人が日本語で交流をします。先日は揖斐川中学校の海外派遣生が海外を見て感じたことを発表してくれました。OBの方にも参加いただき、派遣での経験が今、どのように生かされているのか話していただきました。 また、岐阜の高校生と世界を繋げる「岐阜の若者と世界をつなげよう(ギフセカ)」プロジェクトを展開しています。例えば、長良高校のふるさと教育の一つとして、オンラインを通じて世界で活躍するみなさんの活動を紹介していただいており、GKI副会長のハッピー水谷さんを中心に活動しています。あとは、英語で岐阜のことを紹介する「ギフアイプロジェクト」を開催しています。
―― ブラジル岐阜県人会さんとしてはどのような活動をしているでしょうか。
長屋会長 ブラジル県人会では、岐阜県農業高校生海外実習派遣団の受け入れを43回行っています。毎年、岐阜県の農業高校生10人が派遣され、大農場での農業を体感している事業で、私たちとしても母県の若者と交流ができるので楽しみにしています。この子たちが岐阜の未来の鍵を握っていると考えると心強いです。岐阜県警の語学研修が半年間あり、こちらも最大限フォローをさせていただいています。また、ブラジルの岐阜県出身者の子孫による岐阜大学への留学支援する「県費留学制度」も長い歴史があります。勉学だけでなく、岐阜の暮らし、文化を体験し、ブラジルへ戻った時に県人会を活性化してただく制度です。
―― 岐阜県のみなさんにメッセージをお願いします。
長屋会長 文化交流、人材交流、物産展などの経済交流など、ぜひ、海外とつながりたいと思ったら、県人会を利用してください。私たちとしても母県への恩返しにもなりますし、県人会の存在意義を感じることができます。ブラジルは距離的には遠いのですが、親日の方も多いので、遠くて近い国というところをキャッチフレーズに活動していきたいと思います。
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