地域も個人も、もっているポテンシャルを伸ばして活気のある岐阜県に

一般社団法人 岐阜県経営者協会
会長 山口 嘉彦 さん
(株式会社エスライングループ本社 代表取締役社長)

すでにもっている観光素材や産業技術をいかした岐阜県に

-- 岐阜県の印象や経済の動きで感じていることを教えてください。

山口会長 岐阜県は高い技術力で航空機や自動車関連の工業製品の製造など、中小企業が頑張っており、職人気質で堅実な方が多い印象です。仕事もありますし、住みやすい県ではないでしょうか。岐阜公園を中心に活動しているボランティア団体「岐阜市まちなか案内人」のメンバーでもある私の友人が、「岐阜にはたくさんの見どころや施設がある」と言っておりましたが、観光素材もたくさんもっている、観光客を呼びやすい地域なのではないでしょうか。

-- 観光産業を伸ばしていくためには、どうしたら良いと思われますか。

山口会長 先日、出張で広島、姫路、岡山、神戸に行きましたが、観光客が非常にたくさんいました。広島や神戸に大勢の観光客がいるのは納得ですが、姫路も観光客で賑わっていたのは意外でした。おそらく、まち自体は岐阜よりも小さいと思うのですが、文化的な姫路城と新幹線駅からすぐ立ち寄れる立地、そして、駅前の開発がどんどん進んでいるから観光客に人気があるのではないかと思いました。駅から正面に姫路城が見えて、夜はお城のライトアップ演出がされているので、その風景を見ながら帰ることができます。この演出は観光客も喜びますよね。姫路は宿泊施設もたくさんありますが、新幹線の駅があるおかげで、大阪と広島の移動途中に数時間だけでも立ち寄ることができます。10年ほど前の姫路と比べると、飲食店も増え、ガラっと変わった印象があります。

犬山や高山もかつてに比べて、観光への意識が変わってきているようです。犬山は城下町で食べ歩きができる町並みに変わりましたし、高山は観光客に尋ねられると、市民のみなさんがホテルの場所やおいしい食事処を教えてくれるというホスピタリティ精神をもっている。岐阜市周辺も観光を伸ばそうと思ったら、行政に任せるだけでなく、私たちの意識も変えて頑張らないといけないと思います。昨年、「ぎふ信長まつり」で木村拓哉さんが「信長公騎馬武者行列」に参加してくださり、岐阜と織田信長のイメージをつなげてくれました。岐阜駅では黄金の織田信長が迎えてくれます。せっかくの素材がありますから、観光客を迎える演出を考えると良いのではないでしょうか。

-- 観光以外の産業ではいかがでしょうか。

山口会長 これまでに培ってきた産業技術をさらにいかし、日本や世界に必要とされる技術に力を注いでいくと良いのではないでしょうか。リニア中央新幹線の駅が恵那市の市境に近い中津川市に設置されると、東濃が発展していくでしょう。名古屋にも近いですし、リニア中央新幹線が走り出すと東京も通勤圏になります。リモートで仕事ができる時代になりましたので、岐阜に住まいを構えて遠方の仕事をするなど、働き方も変わっていくのではないでしょうか。

プライベートでは金華山登山が楽しい。学生時代から続けている読書も。

-- オフタイム時の過ごし方や趣味を教えてください。

山口会長 最近は健康のためにも、低山登山を趣味にしています。朝9時に家を出て車で金華山の麓まで行って、頂上まで往復して帰りに柳ケ瀬で昼食を食べて帰ってくると午後1時頃。楽しく、気軽にウォーキングができます。私は心筋梗塞で倒れたことがあり、リハビリも兼ねて水中歩行をしたこともあるのですが、同じところを歩くので飽きてしまって。登山だと景色を眺められますし、空気がいい。真夏も気持ち良く歩くことができるので、今は登山で健康維持をしています。雨の日は柳ケ瀬界隈から岐阜駅にかけて歩いています。

-- 学生時代はスポーツをされていたのでしょうか。

山口会長 柔道に打ち込みました。私は高校から東京へ行き、高校時代は柔道一筋だったのですが、新宿や六本木、赤坂に住む今でいう多様性に富んだ友達ができると、たくさんの新しい経験をすることができました。その中で感化されたことがあって、本好きな友達が読書感想会のように「この本のここが面白い、この小説が良い」という話を聞いた時です。柔道しか知らなかった私はそういう世界があるのかと、カルチャーショックを受けました。その時から石原慎太郎や石坂洋次郎などの小説を読むようになり、本が好きになりました。冊数はそれほど多くないのですが、今も移動時間に読書をします。

-- 学生時代は東京でさまざまな経験をされたのですね。

山口会長 まちを歩いていると、きっと田舎から出てきた学生だということが分かるのでしょうか、言葉巧みに誘導されて、高額な商品を売りつけられそうになったことが数回ありました。本当にお金がなかったものだから、ギリギリのところで断ることができたのですが、もしかしたらこの時の経験は勇気を持って「丁寧にお断りする」という部分で、今にいかされているのかもしれません。私はケチで通っていますので浮いた話はもちかけられません(笑)。お金の問題だけでなく、無駄なことはやめましょう、というスタンスです。

多様な世の中で自分の個性を発揮して欲しい

-- 若い方へ向けてメッセージをお願いします。

山口会長 昨年のワールドカップやWBCでは、飛び抜けて能力のある選手が活躍していました。監督も選手の力を信じていたからこそ、良い結果につながったのではないでしょうか。かつての日本社会は「出る杭は打たれる」でしたが、今は「出る杭を育てる社会」に変わってきています。その人の能力に合った仕事を任せることで、企業としても伸びていく、企業が伸びれば給料も底上げできます。若い方には出る杭になるぐらい、自分の個性を発揮していただきたいと思います。

-- 経営者協会の活動にもつながっていますね。

山口会長 「人」をテーマに、SDGsやデジタル化の推進、社会的課題に関する企業の取り組みを支援しています。例えば、データ化で作業効率を上げる方法や、女性、外国人、若年者、高齢者、障がい者など多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できるように労働環境を整えるなど、生産性向上や労働環境改善の実現を目指して取り組んでいます。県外に人材が流出している中、優秀な人材の確保や定着のための働きやすい職場づくりにも取り組んでいきます。