可児市 冨田 成輝 市長

Leader's Voice

地域が主体的に大切な歴史・文化を守り、
本物ならではの魅力を伝える

可児市の冨田成輝市長
地域が主体的に大切な歴史・文化を守り、<br>本物ならではの魅力を伝える | 市町村長

Interview

可児市

冨田 成輝 市長

「住みごこち一番“+(プラス)”」のまちづくり

――  令和8年度は「住みごこち一番“+(プラス)”」の取り組みを展開されますね。

冨田市長 はい。「住みごこち一番」については、市長1期目から言ってきましたが、2期目から特に力を入れています。若い方から高齢者まで、いろいろな方に「どういうまちにしたいですか?」と聞くと、「住みやすいまち」「暮らしやすいまち」という答えが返ってきます。当市は災害に強く、名古屋にも比較的近いし、身近に自然があり、大観光地のように大勢の人が押し寄せることもありません。外国籍の方は多いですが、特別な意識はなく普通に接しています。小学校でも多いところは3割が外国籍ですが、子どもたちは特別視していません。「そういうまちであり続けてほしい」という声をたくさん聞きます。

可児市の冨田成輝市長との対談風景

 

一方で、若い人が流出しないかというと、そうではありません。大学進学を契機に市外へ出て行ってしまいます。

これまでも住みごこちを一番に考え、市政を進めてきましたが、「住みごこちの良さ」は生活環境だけでなく、歴史や文化など様々な“可児市の良さ”を通じて実感して頂けるものです。今年度は、そうした“可児市の良さ”をもっと多くの方に知ってもらいたいという事で、「住みごこち一番」に“+(プラス)”という言葉で表現し、取り組みを進めていきます。

数多く残る山城を中心にした地域活動が盛ん

――  その中で、山城を中心にした地域活動が盛んですね。

冨田市長 はい。当市は昭和50年代に人口が増えて、人口の7割、8割が市外からの転入です。そのため、市の歴史を知らない方が多いです。例えば、当市の名誉市民である加藤孝造さんについて知らない方が意外に多いです。

急に人口が増えたので、若いまちのように思われていますが、「可児」という名前自体は飛鳥時代からあります。中恵土には前方後円墳「長塚古墳」がありますが、東美濃では最大級です。つまり、東美濃で、一番力を持っていた人が住んでいた証拠です。それだけ長い歴史があることは、市民の誇りになります。

長塚古墳

長塚古墳

 

その代表の一つが山城です。織田信長が美濃を制するものは天下を制すると言ったように、当市には戦国時代の山城が10カ所あります。代表するのが「美濃金山城」で、私が市長になった2年目ぐらいに国の史跡として指定されました。こうしたものを、まずは市民に知ってもらうということで取り組みを進めてきましたが、今後は全国、世界の方々に知ってもらいたいと思っています。

――  美濃金山城は当時、重要な位置づけになっていたわけですね。

冨田市長 はい。信長は、部下の中で非常に地位の高い森家を城主に配して東美濃を統一しました。美濃金山城については、「金山越(かねやまごし)」という伝承が残っています。慶長5年(1600)2月1日、関ケ原の戦いの重要な戦略として美濃金山城を解体し犬山に移築、徳川家康から犬山の石川光吉に与えました。この話は、金山越として兼山、犬山双方に伝えられています。その際、城門の一つが瑞泉寺(犬山市)に移築されたと伝わっていて、昨年3月に瑞泉寺から「可児市戦国山城ミュージアム」に移設されました。こうしたことも、多くの方に知ってもらいたいと思っています。

――  山城が10カ所あるとのことでしたが、それぞれ地域が主体的に活動を展開しているようですね。

冨田市長 はい。美濃金山城跡のおまもり隊、久々利城跡の城守隊、今城址を整備する会がまとまって可児市山城連絡協議会を組織し、行政と連携して整備活動をしてくれています。こうした地域活動のグループのよいところは、観光に使うというよりも、大切に守っていきたい、戦国時代に重要な役割を持った山城が当市にあったことを知ってもらいたいという思いで守ってきました。そのことが評価されて、令和元年度の都市景観大賞(主催:「都市景観の日」実行委員会)、景観まちづくり活動・教育部門の大賞である国土交通大臣賞を城守隊が受賞し、令和5年には、第2回日本城郭文化振興賞を可児市山城連絡協議会が受賞しました。

久々利城跡

久々利城跡

久々利城跡の整備の様子

久々利城跡の整備

――  「山城に行こう」というイベントも定期的に開催されていますね。

冨田市長 はい。市外の方はもちろん、かなり遠方から足を運んでいただく方もたくさんいます。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、“山城のメッカ”にさせていただいたと思っています。イベントの内容も、実際の城跡で様々なイベントを展開する点がユニークで、メイン会場のトークショーに加えて、豪華ゲストと山城を巡る企画や、スポンジ製の刀と矢を使って大人数で城攻めをするイベントなど、工夫を凝らした企画で構成されています。

山城という歴史的遺産を後世に残すとともに、観光資源としても活用することを目的にしており、平成28年から10年連続開催し定着させたことも評価され、今年は、城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体等を顕彰する調査・整備・活用賞に「可児市「山城に行こう」プロジェクトチーム」が選ばれました。

山城に行こうの会場風景

山城に行こう!

本物の素晴らしさを内外に広く伝えたい

――  山城を大切に守り、受け継ぎ、その魅力を発信し続けた姿勢が評価されたということですね。

冨田市長 はい。山城ですから、人工的なものは建てられていません。当時の遺構がそのまま残っていることが魅力だと思います。信長が見た景色をそのまま見ることができますし、当時の石垣や犬山へ移築された際に破城した跡もそのまま残っています。そうした点が山城のよさだと思います。ですから、好きな人は長い時間たたずんでいる人もいます。“本物のよさ”を、ぜひ味わいに来てほしいと思います。

その意味では、当市は日本の茶道を支えた美濃桃山陶の聖地でもあります。「荒川豊蔵資料館」があります。日本人がつくった国宝の茶碗は、わずか二つだけです。その一つである卯花墻が久々利で焼かれて、その窯跡が荒川豊蔵さんのおかげで、そのまま残っています。美濃桃山陶が盛んに焼かれた頃の景色がそのまま残っているのです。さらに、木曽川の流れを中心とした当市ならではの豊かな自然、昔ながらの日本の情景を見ることができますので、ぜひ多くの方に味わってほしい、肌で感じ取ってほしいと思います。そして、市民にもあらためて、そういうまちなのだということを知ってもらいたいと思います。

荒川豊蔵資料館の秋の風景

荒川豊蔵資料館

――  非常に評価の高い山城を中心にした地域活動ですが、課題はありますか?

冨田市長 課題は、後を引き継ぐ若い方が少ないことです。次世代を担ってくれる方が出てくれることを期待しています。

――  「山城に行こう」の今年のスケジュールを教えてください。

冨田市長 今年も豪華ゲストによるトークショーと現地の方によるおもてなしを計画しています。日程については秋と来年1月頃を予定しています。

――  市長自身も子どもの頃は、山城に登ったことはありますか?

冨田市長 はい。山城という意識はあまり強くなかったと思いますが、登ったことはあります。ただ、私は今渡に住んでいます。その意味では、信長の母である土田御前の出身が土田ですから、そちらの方が身近でした。

―― 最後になりますが、地域の方が大切な歴史を主体的に守り受け継ぐ素晴らしいお話を聞かせていただきました。

冨田市長 課題もありますが、地域の方が中心になって、素晴らしい歴史・文化の魅力を市内外に発信してくれるのは大変ありがたい取り組みだと思っています。木曽川左岸遊歩道友の会というまちづくりを進めている組織もあって、竹林を主体的に整備してくれています。今は「かぐや姫の散歩道」と呼ばれて、幻想的な雰囲気を醸し出していることから外国の方も多く訪れるスポットになっています。当市にはたくさんの素晴らしい地域資源がありますので、地域の宝として大切に残しながら、磨き上げ発信することで、市外からの誘客や関係人口の創出にもつなげていきたいと思います。

かぐや姫の散歩道

かぐや姫の散歩道

 

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