INTERVIEW
Leader's Voice
テーマは地域力の再生
祭りやイベントを盛り上げ、地域の絆を結びなおす
Interview
古田 聖人 町長
普段からの助け合い、顔を見ることができる関係性が重要
―― 笠松町の新しい動きについて教えてください。
古田町長 防災力の強化ということで、地域の見直しをしています。最近、若い世代を中心に、自治会に入らない方が増えています。1月に起きた能登半島地震に対しては、輪島市と中能登町に当町から14人を派遣しました。職員からは「普段から地域のつながりがしっかりしているところは、避難所も住民が主体となって運営できていました。行政職員にも負担が少ないですし、住民同士のコミュニケーションもとれていてトラブルも少ないです。
また、自主避難所として地域の方々が集まって避難生活をされているケースもありました。逆に地域の絆が希薄だと、「避難所に行っても知らない人ばかりだから」と言って、避難所に行かない方がみえます。独居の方の家を訪問した時も、先の見えない避難所生活に対する否定的な言葉が多く、いたたまれない気持ちになりました」という意見を聞きました。そういう声を聞くと、普段からの助け合い、顔を見ることができる関係性が重要だと感じました。そこで改めて地域の絆を結びなおすことが大切だと考えています。
これは災害時だけではありません。高齢化社会で独居の方がどんどん増えていきます。生涯未婚率は高くなっていて、男性の4分の1ほどは生涯独身です。一人暮らしの方が増えていくと、認知症やねたきりになって、普段から近所づきあいがないと、最悪の場合、孤独死になるケースも増えていきます。少子化が進む中、介護施設も人手不足になっています。
そうした中、誰が見守りをするかというと、地域で支えあう必要があります。普段からコミュニケーションをとっていれば、認知症の予防にもなりますし、周りが気付いて「病院へ行った方がいいよ」と声をかけてくれます。地域の絆は昔よりも逆に今の方が重要だと改めて認識しています。
ただ一方で、自治会に入らない、あるいは子ども会やPTAから距離を置く人が増えているので、どうしたものかと頭を悩ませています。理屈で説いても、なかなかピンとこないと思います。そこで春からお祭りやイベントを盛り上げることに取り組んでいます。普段、顔を合わせていなくても、祭りで一緒に神輿をつって、お酒を飲むと、これまで話しづらいと思っていたけれど、「やさしい人だな」「ちゃんと話を聞いてくれるな」と考えが変わります。年配の方も若い世代にレッテルを貼っている部分もありますが、「意外としっかり考えているな」「これなら地域のことに協力してくれるのではないか」と思える空気を作っていきたいと考えています。
役場周辺の笠松地域は高齢化が進んでいる地域で、なかなか神輿が出せなかったのですが、今年は松波総合病院、地元の金融機関、役場などから人を出して、少しでも祭りを盛り上げようという取り組みをスタートしました。初めてなので、地域の方との積極的な交流にまでは至っていないですが、役場が地域行事に協力する姿勢を見せることが、まずは第一歩だと考えています。
8月には「笠松みなと公園」で「かさまつナイトバブルフェス」というシャボン玉、音楽、光が融合したイベントを開催しました。当日は約2万5千人が来てくれて、大盛況でした。こうした活動を通じて、「私が住んでいる笠松町はたくさんの人が来てくれて、いいな」と誇りを取り戻してもらうと、郷土愛が生まれて、そこから隣近所の結びつきができると思います。「自治会は入るものだ」と頭ごなしに言っても、かえって抵抗感が出ます。遠回りのように思えますが、自然な形で地域の結びつきの見直し、地域力の再生を今年のテーマにして取り組んでいるところです。
ロケツーリズムの推進でまちをPR
―― ほかの動きについても教えてください。
古田町長 パートナータウンシップ協定ということで、民間企業や団体と協定を積極的に結ぼうと考えています。これまでも包括連携を結んでいましたが、少し漠然としていました。9月にはぎふ農業協同組合とホームタウンパートナー協定を結びました。スポーツ振興が大きな目的で、JAぎふリオレーナの選手にバレーボールを教えてもらう予定です。今後も、イベントを企画する企業、空き家対策として住宅会社など、分野に特化した形で協定を結びたいと考えています。その先に、ファンクラブのような形で、当町を中心に企業同士を結びつけて、ネットワークを作って、地域の活性化に結びつけていきたいと考えています。
当町として、いきなりあれもこれもはできませんが、まずはパートナーになってくれた企業のリンクをホームページに載せたり、イベントに優先的に参加できる権利を与えるなど、できることから進めていきたいと思っています。
ただ、そのためにも当町の知名度を高めていく必要があると思います。そこで、今年からロケツーリズム協会を立ち上げて、ロケツーリズムを進めていこうと思っています。詳細を話すことはできませんが、最近も笠松競馬場で撮影がありました。当町は、今話したように、競馬場があり、古い住宅があり、火葬場もあります。 当町で映画のシーンが撮影されるということは、とても大きな宣伝効果があると思います。
俳優、女優が訪れれば地元の人たちも関心を持ってもらえます。岡田准一さん、広末涼子さんが出演している映画「最後まで行く」でも、当町はロケ地になりました。ロケ場所は火葬場でしたが、映画の公開後は、聖地巡礼ということで若い女性がたくさん訪れました。なぜ火葬場かといえば、昔ながらの火葬場で煙突もあるところが映画会社の目に留まったようです。これは、当町から売り込みをしたわけではなく、映画会社から申し込みがあったものです。このように外から見ると、意外なものに光が当たります。改めてまちの魅力を見つめなおして、ロケツーリズムの推進に力を入れていきたいと思います。
空き家対策は名古屋圏に向けてアピール
―― ほかにはいかがですか?
古田町長 教育については、当町では子どもの権利に関する条例を制定しています。子どもの権利というと、関心のない方の中には「子どものわがままではないか」という方がいます。また、子ども自身も知らないケースもあって、条例制定のために骨を折っていただいた、子育てボランティアの方々はもどかしさを感じています。
この条例をもっと浸透させて、子どもたちが自立的に動ける環境を整備していきたいと考えています。例えば、多様性の時代ですから、いろいろな学びの形があっていいと思います。当町の高校生が起業したというニュースもありましたが、子どもたちがいろいろなことに挑戦することに対して、大人が上からものを言うのではなく、背中を押してあげる地域づくりを進める、あるいは学校教育を進めることで、人間力を高めていくような環境を作っていきたいと考えています。
―― 最後になりますが、空き家対策についてはいかがですか?
古田町長 当町の面積は10.3㎢で、3分の1が河川敷で建物を建てることができません。南部は市街化調整区域が広がっていて、これ以上の開発はなかなか難しいです。計算してみると、市街化区域は5.3㎢ぐらいしかありません。その中に人口約2万2千人、世帯数は1万近くあり、過密しています。ただ一方で空き家は増えていて、ここ2年ほど特に力を入れて空き家対策に取り組んでいます。今年は空き家の実態調査をゼンリンに委託して、空き家がどこに何軒あるのか詳細に調べてもらいます。また、空き家相談会も開催していて、少しずつですが動きが出てきました。街中では、古い家を壊して駐車場として再整備したり、家を建て替えて、息子さんが住むといった動きが出ています。
松枝、下羽栗などの郊外も動きが出ていて、人口当たりの住宅着工数は県下3番目で、住宅の着工数は多いです。不動産としては人気の高い場所です。個人的な思いになりますが、岐阜市や一宮市に比べると地価は安いですから、土地さえあれば家が建つのだと思っています。今後は円城寺厩舎の跡地の活用も含めて、攻めの施策を打っていく必要があると考えています。当町は名古屋圏になりますから、PRについても、名古屋圏に向けて積極的に進めていきたいと思います。
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笠松町の情報
面積:10.36km2
人口:21,840人(令和6年10月1日)
町の木:松
町の花:さくら
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